7節 マッチサマリー(キヤノン 17-35 リコー)

キヤノンイーグルス 17-35 リコーブラックラムズ
【week7/2012年10月21日(日)/神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場】

 

リコーが粘るキヤノンを後半突き放し古豪の意地を見せる

好天の中、8073人の大観衆がニッパツ三ツ沢球技場に集まった。両チーム共に2勝4敗同士の対決。勝ち点も同じ11点、得失点差で、キヤノンイーグルスは9位、リコーブラックラムズは10位とほとんど差がない。しかし、最近の試合では4連敗後に2連勝と波に乗ってきた古豪のリコーとトップリーグの"新人"として上位チームとも差のない試合をしてきたキヤノンの対戦は、両チームにとって今シーズンの重要なターニングポイントと考えているであろう。各チームの応援も試合前からヒートアップ!神奈川県内のラグビースクール小学2年生によるキッズエスコートを伴い入場してきた選手達も、いつもにまして気持ちが昂ぶっているのが見られる。いよいよ両チームの大応援団のなかキックオフ!

開始10分、キヤノン10番22m付近中央ラックからDGで先制。しかし、リコーも17分10番河野がキヤノン内40mのPGを決め同点となる。両チームのディフェンスよく22m内になかなか入れない。しかし、22分キヤノンがリコー陣10mラインから右に展開、フォロー良く最後は15番橋野から鋭いタイミングで入ってきた14番和田にパスして右中間にトライ。10番カラム・ブルースのゴールも決まり7点のリード。
しかし、36分、キヤノンの左オープンでパスミスしたボールをリコーが拾い8番オリフィエの素早いフォローから最後は15番横山が右中間にトライ。10番河野のゴールも決まり前半を同点で折り返す。

後半開始41分、キヤノン22mライン手前の反則からリコー10番河野がPGを決め3点リード。しかし、キヤノンも48分リコー陣中央から右に展開し、フォロー良く最後は14番和田が抜け出し今日2本目のトライを中央に決め、10番カラム・ブルースのゴールも決まり再びキヤノンがリードする。
このままキヤノンのペースになるかと思われたが、すぐにリコーの反撃が始まる。その2分後のキヤノンのラックをターンオーバーしてすぐ右に展開、15番横山が抜け出し6番カウヘンガ桜エモシがフォローして右中間にトライしてついに逆転する。やや受け身になったキヤノンのディフェンスもあり、58分にリコー右サイドから展開して横山からロイ・キニキニラウが抜けだし右中間にトライ、68分には8番ブロードハーストがキヤノン右ゴール前ラックサイドから抜け出して中央にトライ。10番河野のゴールも成功し13点差とした。79分にはコリン・ボークがトライして貴重なボーナスポイントを獲得して勝利を決定的にした。

両チーム、パワープレーやセットプレーも互角だったが、少ないチャンスを得点に結びつけたリコーが本来のチーム力を発揮して快勝。駆けつけた大応援団の声援に応えていた。キヤノンは60分までリードを奪っていたが、古豪としての地力を発揮してきたリコーの壁を崩せなかった。リコーは3連勝で3勝4敗(勝点16)、キヤノンは連敗で2勝5敗(勝点11)となった。マン・オブ・ザ・マッチには、リコーブラックラムズの15番横山伸一選手が選ばれた。ニッパツ三ツ沢球技場での観客数が8000名を越えラグビー開催では新記録となったが、両チームの熱戦に日本最高峰のラグビーフットボールの魅力を充分満喫できたゲームであったと思う。(勝又 修)

 
 
会見ダイジェスト
キヤノンイーグルス
永友監督(右)、和田キャプテン
永友監督(右)、和田キャプテン

■キヤノンイーグルス

──今日はどのようなゲームプランで臨みましたか。

永友洋司監督
「まず、本日は沢山の応援の中でプレーができて幸せだったと思います。ゲームを振り返ると、本日は得点してリードした後、突き放すことができず、逆に失点しました。勝つ文化を持っているチームは失点した後に冷静になってプレーを行います。イーグルスも失点の後いったん取り返しましたが、ここでまた突き放されました。もうひと踏ん張りという点が未熟だったと思います。リコーはラグビー自体がすばらしい点は大前提にありますが、加えて勝つ文化があります。我がチームは勝つ文化が足りませんでした」

和田拓キャプテン
「本日は多くのファンに来てもらえてうれしく思いました。声援に元気づけられました。ゲームの内容は監督の申し上げた通りです。先制点をとってからがバタバタしました。後半の半ば以降は自分達のアタックができませんでした。攻められたときの我慢を含めて、もっとレベルアップが必要かと思います」

──キヤノンとリコーは会社同士がライバルです。この点で、チームとしての特別に意識された点はありますか。

永友監督
「我々のベースは企業スポーツです。社員に元気や活力を感じ取ってもらえるように、ラグビーを通じてメッセージを伝えていくことが大きな役目です。そのためには、今日の試合だけではなく、毎試合すべてで社員に元気・活力のメッセージをしっかり伝えたいと考えています。今日の試合が何か特別の意味を持つのではなく、毎試合、応援してくれているサポーターにフラッグシップ、『我々のイーグルス』を感じてもらいたいと思っています。そういう意味で、我々チームのひとりひとりには毎試合が特別です」

──双方ともかなりのお客様が入って、応援にも熱が入っていましたが。

永友監督
「今日の試合はイーグルスがリコーにチャレンジする立場でしたが、日本のラグビーの活性化のために、例えば『○○ダービー』のように打ち出していくことで役に立つということであれば、企業がお互いに組んでイベントを組んでいくというのもありかもしれません」

──前半で同点と激しい試合でしたが、ハーフタイムにはどのような指示をしましたか。

永友監督
「ペナルティが多かったので無くすよう指示しました。本日の敗戦はペナルティも要因だったかと思います。選手はリコーのプレッシャーの中でよく戦いましたが、もう少しを粘れなかった点は反省点です。特にディフェンスでもっとペナルティを意識してほしかったと思います。

──本日はトエアバ選手を初めてスタメン起用していますが、その理由は何でしょうか。また今後へ期待する点は何ですか。

永友監督
「リコーの展開を考えていましたので、若い選手に対してディフェンスラインのオーガナイズをリードしていく点を期待しました。アタック面ではゲインラインを意識し、生まれるスペースを使ってほしいと考え、起用しています。新規加入ですが、徐々にチームにフィットしてきています。カラム・ブルースはインパクトがあり、プレーも正確です。我がチームでも見習うべき点が多くあります。今後チーム全体としてレベルアップができると思います」

──和田主将は神奈川県内のラグビースクールの出身ですが、後輩たちにメッセージをお願いします。

和田キャプテン
「神奈川県出身ということで、やはり色々と声を掛けてもらえます。本日は仲間としてプレーをする姿を見せられたことはうれしく思います。沢山の声援に感謝しています。後輩たちにも是非とも頑張ってもらいたいと思います」

 
リコーブラックラムズ
山品監督(右)、小松キャプテン
山品監督(右)、小松キャプテン

■リコーブラックラムズ

──今日はどのようなゲームプランで臨みましたか。

山品博嗣監督
「自分達のペースで試合をしろと伝えました。キヤノンは走るので、ヒット・ヒット・ヒットで優位に立つことを心掛けました」

小松大祐キャプテン
「自分達のプレーのペースに持ち込もうとしましたが、キヤノンのブレイクダウンに受け身に回ってしまいました。リコーは途中出場のインパクトプレーヤーが仕事をしてくれました。今後チーム力が高まっていくことが期待できます」

──前半タイトな試合でしたが、ハーフタイムの指示は。

山品監督
「めざめよ、の一点です。特にブレイクダウンの攻防ですね。キヤノンはアシストタックラーがしっかり入ってきました。このため、相手ゾーンに入ると劣勢になりました。このあたりをしっかり行うよう指示しました。また、若い選手は横に流れていたのでこの点も修正を求めました。後半は前半よりも早くサポートが入るようになったと思います。前半はブレイクダウンが2人のみが多かったがこの点も修正できたと思います」

──本日は会社同士がライバル、という試合でしたが、この点はいかがですか。

山品監督
「多くの選手が職場でプレッシャーを感じています。それだけに、ラグビーは平常心でやるよう仕向けました」

──結果的には盛り上がりましたし、注目もされたと思いますが。

山品監督
「両チームとも多くのサポーターに来ていただき、ありがたいと思います」

──キヤノンの永友監督は、ダービーマッチで活性化できるならそれもいいのではないかとのご意見でしたが。

山品監督
「今日のような試合は個人的には疲れましたが、そのような企画を行うのであればそれもいいかと思います」

──マン・オブ・ザ・マッチはロングゲインした横山選手が受賞しましたが。

山品監督
「求めているところはもっと高いところです。横山選手に求めていくものはアタックです。横山選手はスピードに変化を作れる等、他の選手にない長所もありますので、長所を生かしながら使っていきたいと思います」

──3連勝ですが、キャプテンとしてよくなった点は何だと思いますか。

小松キャプテン
「やるべきことはやってきましたが、ここに来て雰囲気が変わってきました。一体感が出てきたと思います。練習の時からチームワークがあります」

── 一体感のきっかけは何だったのでしょうか。

小松キャプテン
「開幕から4連敗した悔しさだと思います。自分から言わずとも、他の選手から悔しさの声が出てきたのでまとまったのだと思います」

──神奈川のちびっこファンに一言お願いします。

小松キャプテン
「今日も『リコー! リコー!』の声援で勇気づけられました。自分達も先頭に立って、体を張ってプレーをしていきますので、これを見て頑張ってほしいと思います。みんなで盛り上げていきましょう」

 

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