●1stステージ第1節プレビュー[3]9月1日編
ダービー戦とサバイバルマッチに
豊田スタジアムが熱く燃える!?
■NTTドコモレッドハリケーンズ - 九州電力キューデンヴォルテクス(プールA)
9月1日(日)17時 愛知・豊田スタジアム
昇格3シーズン目となるNTTドコモと、再昇格後2年目のシーズンを迎える九州電力の対戦。
トップリーグ参加1年目が14位中12位で2年目の昨季は13位。いずれも入替戦での激戦を経て、しぶとく日本最高峰の戦いに加わり続けてきたのがNTTドコモ。
下沖正博ヘッドコーチ、LO吉岡宏樹主将という新体制で臨む今季は「ファーストステージでの上位4強入り」(同HC)を狙っている。
その大きな目標を達成するためのキーマンとして招かれたのが南アフリカ代表FLハインリッヒ・ブルソー。
181センチ、101キロとサイズはないものの、ブレイクダウンでのボールハント能力は間違いなく世界有数。
元日本代表主将のNO8箕内拓郎も健在なだけに、まわりとどんなふうにリンクしていくか楽しみだ。
ブルソーは同じく南ア出身のFBリアン・フィルヨーンと共に開幕戦の先発メンバーに名を連ねている。
また、プレーのインパクトでは2人の南ア出身選手にひけをとらないフィジー代表WTBシレリ・ボンボも新加入。6月のIRBパシフィック・ネーションズカップでは迫力ある走りでジャパンのDFを打ち破っていた。こちらは開幕戦ではベンチスタートとなる。
「インチ・バイ・インチ」が今季の九州電力のチームスローガン。
東芝に100点ゲームで敗れるなど、打ちのめされたゲームもあったものの、サントリーには29 - 34と迫るなど、「あと一歩力が及ばなかった試合がたくさんあった」(FL松本允主将)。
開幕戦で対戦するNTTドコモのようなド派手なリクルーティングではなく、全員が日々一歩一歩成長していくことが、昨季の善戦を勝利という結果に変えていくための最善の方法と考えられている。
元NZ代表クリス・ジャック、SHジェームス・プライスなどが退団。新人では小柄ながら攻守に体を張ったシャープなプレーを見せるCTB中づる(雨冠に隹・鳥の順)憲章が先発メンバー入りしている。
■トヨタ自動車ヴェルブリッツ - 豊田自動織機シャトルズ(プールA)
9月1日(日)19時 愛知・豊田スタジアム
豊田スタジアムでの第2試合はTOYOTAダービー。
昨季あと一歩のところで4強入りを逃したトヨタ自動車は、仕上がりの良さが際立つプレシーズンを過ごした。
網走の夏合宿では、リコー、NTTドコモ、東芝に快勝。8月17日にはヤマハ発動機も33 - 21で下している。
元々フィジカルな戦いを得意とするチームだが、今季は「どんな相手にもフィジカルで圧倒する」(HO上野隆太主将)ことを公言。いままで以上にストレングスに力が入れられてきた。
夏の時点とはいえ、東芝、ヤマハ発動機というフィジカルにこだわるチームを圧倒したことで、チーム全体が自信を持ってのシーズンインとなる。
NECから移籍したSOキャメロン・マッキンタイアーが、「元々、トヨタのプレースタイルに合うと思っていた。体張るし、しっかりFWを前に出してくれる。ひとつひとつのプレーの確実性も高い」と、廣瀬佳司監督が絶賛するとおり、すっかりチームにフィット。
昨年はケガの影響もあって満足いくプレーができなかった元ニュージーランド代表FLジェローム・カイノに関しても、廣瀬監督が今季期待する選手として真っ先に挙げるほど状態はいい。
日本人の新人では、WTB彦坂匡克がいきなり開幕戦で先発メンバー入りしている。
昨季、入替戦でサニックスブルースを破り、3年ぶりとなるトップリーグ復帰を果たした豊田自動織機。
田村誠監督が「正直、特に体力づくりのところで、もう少し時間がほしい」と正直に吐露するとおり、チームとしてトップリーグでいい成績を残していくためには、ある程度、経験のある他のチームからの移籍組や外国人選手に頼らざるを得ない面があるのは確か。
昨季からチームの中心選手として圧倒的な存在感を見せていたNO8ライアン・カンコウスキー、SOマーク・ジェラードに加えて、今季は近鉄から元日本代表CTB大西将太郎、キヤノンから決定力のあるWTB大居広樹も加入。
いずれも開幕戦の先発メンバーに名を連ねている。
ファーストステージ、セカンドステージに分けて行う新方式も「以前のやり方だと下から上がってきたチームは最初に強いチームとばかり対戦させられて、疲弊していく傾向があった。ある程度、バラつきのある今のやり方の方がチャンスはあると思っている」(田村監督)と、前向きに受け止めている。
(text by Kenji Demura)
●1stステージ第1節プレビュー[2]8月31日編
東芝は東京、パナソニックは大阪で開幕
神戸では神戸製鋼 - NECの好カードも
オープニングゲームのサントリーサンゴリアス - NTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦が行われた翌日の31日(土)には、東京、大阪、神戸の3都市で計5試合が予定されている。
■リコーブラックス - コカ・コーラウエストレッドスパークス(プールB)
8月31日(土)17時 東京・秩父宮ラグビー場
1年間のトップキュウシュウAでの厳しい経験を経て、再昇格を果たしたコカ・コーラウエストは、東京に遠征して「関係の深い」(山口智史監督)というリコーの胸を借りるかたちで、トップリーグでの再スタートを切る。
「去年、春、夏、秋と練習試合を組んでもらえて、本当にありがたかった。ずっとターゲットにしてきたチーム」(同監督)
かつては粘り強く守るところからリズムをつくっていく傾向のあったコカ・コーラウエストだが、昨季下位リーグに落ちると同時に就任した山口監督の意向もあって、超のつくアタッキングスタイルを特徴とするチームに生まれ変わっている。
「運動量とプレーの質、ボールの動かし方、あとはマインドセットで相手を上回る。生まれ変わったコーラのオリジナルなラグビーに期待してほしい」と、NO8豊田将万主将。
3月の新チームのスタート時点から、「11月からの後半戦は練習しないくらいのつもりで」(山口監督)、8月第4週に照準を合わせた春夏シーズンを過ごしてきたという復活コカ・コーラウエストの開幕ダッシュに注目だ。
一方、胸を貸すかたちとなるリコーはNZ代表ユーティリティBKタマティ・エリソンが2年ぶりに復帰。いきなりアウトサイドCTBとして先発メンバーに名を連ねている。
昨季まではSOとしてプレーすることの多かった河野好光がインサイドCTBに入り、SOを務めるのはダイナミックなプレーに特徴のある帝京大出身の徳永亮。
ゲームマネージメント能力に優れ、キックでもランでも高いレベルにある選手をフロントスリーに揃えたことからも想像できるとおり、神鳥裕之新監督が目指しているのは「選手個々の判断能力を広げた臨機応変な攻撃」のできるチーム。
新人ながらFBとして先発する高平拓弥、2年目の渡邊昌紀、昨季も10試合で先発出場を果たした星野将利といういずれも170cm台の“チビッコ"バックスリーのスピードを生かす展開に持ち込みたいところ。
前述のエリソンと、昨季も活躍したNO8コリン・ボークを先発起用するため、この春夏シーズンに日本代表として大活躍したFL/NO8マイケル・ブロードハーストはベンチスタートとなる。
■東芝ブレイブルーパス - キヤノンイーグルス(プールB)
8月31日(土)19時 東京・秩父宮ラグビー場
リコー - コカ・コーラウエスト戦に続いて秩父宮ラグビー場で行われるのは、昨季の準優勝チームである東芝とトップリーグ2年目のシーズンを迎えるキヤノンの対戦。
「ラグビーの原点であるモールとフィジカルにこだわった戦いをしていきたい」というのは、東芝の新主将に就任したFLリーチ マイケル。
「過去3シーズン取れていないチャンピオンシップを全力で取りに行く」(和田賢一監督)ために、持ち前の激しいプレーに磨きがかけられている。
夏の網走合宿ではトヨタ自動車に力負けした(8月3日、19 - 28)が、8月16日に行われた恒例の夏のプレシーズンマッチ、"府中ダービー"では後半サントリーを圧倒(31 - 16)。
三上正貴、浅原拓真の日本代表PR陣、昨季まではケガで出場機会の少なかったCTB増田慶介といった若手の活躍もポイントとなる。
「昨季のように若さと勢いだけで乗り切れるわけではない」と、永友洋司監督が語るキヤノンは、2年目のシーズンでさらなる飛躍を遂げるため、「スキルアップ」にひとつの重点的な強化ポイントに置いたプレシーズンを過ごしてきた。
7月の北海道合宿では、クボタ、ヤマハ発動機に大敗を喫したものの、17日に行われたNTTコムとのプレシーズンマッチではA、Bチーム共に快勝。
調子をあげた状態で昨季15 - 21と迫った東芝に臨む。
パナソニックから日本代表LOジャスティン・アイブスが移籍し、NZ代表29キャップを誇るアダム・トムソンも加入(東芝戦はリザーブ)。
力強さを増したFW陣が踏ん張り、7人制日本代表のFB橋野皓介副将に代表されるようなインパクトのあるプレーを見せるBK陣が走り回って、東芝を翻弄する展開に持ち込みたい。
■ヤマハ発動機ジュビロ - クボタスピアーズ(プールB)
8月31日(土)17時 大阪・キンチョウスタジアム
昨季、開幕から4連勝。中盤以降やや息切れした感もあったが、最終的には8勝5敗で6位となり、上位進出への手応えを感じさせたヤマハ発動機。
「いい準備ができた。あとはやるだけ」と、清宮克幸監督が胸を張るように、強力セットプレーを中心に据えた安定感ある戦いぶりは、間違いなく凄みを増している。
夏のプレシーズンマッチでは、王者サントリーを力でねじ伏せ、33 - 19で快勝。
ジュニア・ジャパンでも活躍したNO8堀江恭佑が開幕戦の先発に名を連ねている。
3シーズンぶりにトップリーグに戻ってきたクボタも「スクラムの強化とブレイクダウンの激しさにフォーカスしてきた」(石倉俊二監督)と、ヤマハ発動機の強いエリアで真っ向勝負して、勝機をつかむ考えだ。
ホアニ・マテンガ、フィナウ・フィリペ、ジョシュア・フィマオノと外国人選手で固めたFW3列の頑張りもポイントになりそうだ。
日本代表ではSOでプレーすることの多い立川理道はインサイドCTBで先発。状況判断に優れる高橋銀太郎がSOに入り、リザーブにはパナソニックから移籍したサム・ノートンナイトも控えている。
■近鉄ライナーズ - パナソニック ワイルドナイツ(プールB)
8月31日(土)19時 大阪・キンチョウスタジアム
4年ぶりの王座奪還を目指すパナソニックは敵地・大阪に乗り込んで近鉄と対戦。
昨季、一挙に2人の日本人スーパーラグビープレヤーを生んだパナソニックだが、SH田中史朗がそのままニュージーランドに残ってプレーを続ける一方、来季もSRレベルズでプレーすることが決まっているHO堀江翔太は新キャプテンという重責を担うことになる。
その新主将が「もう一度DFを自分たちの強みと言えるようにしたい」と語るとおり、今季のパナソニックはもう一度、過去に黄金時代を築いた時のような懐深いDF力を取り戻すことをひとつのポイントとしている。
注目の豪州代表SOベリック・バーンズは開幕戦ではベンチ入りせず、同じく新戦力のマイケル・ホッブスが10番を着けて指令塔を務める一方、南ア代表WTBのJP・ピーターセンはリザーブスタート。
新人でU20代表でも活躍したPR稲垣啓太もいきなり先発。
中嶋則文監督が「いままではバラバラに動いていた部分もあったので、意思統一をして、アタックでもDFでも組織で戦っていく」スタイルを最後まで貫けるかが鍵となる。
「昨シーズン、成績は2年前の5位から7位に落ちたものの、チーム力自体はレベルアップしている」(HO太田春樹主将)という近鉄の今季のスローガンは「アグレッシブ・リバイブ」。
「長年トップリーグを代表する強豪であり続けるパナソニックにスローガン通りに思い切りぶつかっていきたい」と前田隆介監督はチャレンジャー精神を強調する。
ハードタックラーだったFL故・中井太喜選手(5月に急逝)の遺志を受け継ぐかたちで、選手全員がパナソニックのエリートたちを倒し続けられるか。
卓越したゲームコントロール力を見せるSO重光泰昌は健在。一方、豊田自動織機に移籍したCTB大西将太郎の穴を埋めるのは、小柄ながらキレのある走りでチームを勢いづけるCTBジーン・フェアバンクス。
新加入の豪州代表NO8ラディキ・サモのボールを前に運ぶ能力も大きな戦力となりそうだ。
■神戸製鋼コベルコスティーラーズ - NECグリーンロケッツ(プールA)
8月31日(土)18時 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場
昨季4年ぶりにプレーオフに勝ち上がり、日本選手権では準優勝するなど、悲願の日本一奪還へ確かな手応えをつかんだ神戸製鋼は地元・神戸にNECを迎えての開幕戦となる。
多くの日本代表選手を抱え、CTBジャック・フーリー、FLジョシュ・ブラッキーなど、圧倒的な働きを見せる外国人選手も健在。
さらに、今季は208センチの巨漢、南ア代表LOアンドリース・ベッカー、実績十分のベテランHO水山尚範、出場停止処分が解かれたSO山中亮平なども加わり、10年ぶりのトップリーグ制覇を果たしてもおかしくない戦力が揃っていることは間違いない。
開幕戦では水山、ベッカーが先発。クレイグ・ウィング、フーリーのCTB陣も万全な状態でシーズンインを迎える。
「日本代表メンバーが7人いなかったり、スーパーラグビー組がいなくても、春の5試合、夏合宿の4試合すべて勝つことができた。底上げができている」と、苑田右二ヘッドコーチも手応えは十分の様子。
例年以上に、ストレングス&コンディショニング面にも力が入れられており、昨季以上にスケールアップしたムービングラグビーが見られそうだ。
伝統的には強固なDF力を誇ってきたNEC。
ただし、4強から一気に8位にまで落ち込んだ昨季に関しては「守りがウィークポイントになっていた」というのがクレッグ・クーパーヘッドコーチの反省点でもある。
開幕戦の対戦相手である神戸製鋼とは夏合宿の対戦では6トライを奪われて33 - 36で惜敗。
春からDFでのトレーニングをしてきたという成果が出せれば、本番で結果を引っくり返すことも可能になる。
トヨタ自動車に移籍したキャメロン・マッキンタイアーに代わって、コカ・コーラウエストから移籍した元日本代表のウェブ将武が開幕戦のSOを務める。
2年前のトライ王で、6月にはフィジー代表として日本代表を破ったWTBネマニ・ナドロも健在だ。
(text by Kenji Demura)
プールAの8チーム。左からNTTドコモレッドハリケーンズ、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス、トヨタ自動車ヴェルブリッツ、サントリーサンゴリアス、神戸製鋼コベルコスティーラーズ、NECグリーンロケッツ、九州電力キューデンヴォルテクス、豊田自動織機シャトルズ |
プールBの8チーム。左からコカ・コーラウエストレッドスパークス、リコーブラックラムズ、ヤマハ発動機ジュビロ、東芝ブレイブルーパス、パナソニック ワイルドナイツ、近鉄ライナーズ、キヤノンイーグルス、クボタスピアーズ |
●1stステージ第1節プレビュー[1]8月30日編
プレシーズン全敗の王者サントリーに
セットに磨きをかけるNTTコムが挑戦
2チームが増え、2プール/2ステージ制で戦う新たなシーズンが幕を開ける |
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サントリーサンゴリアスの三連覇はなるか‥‥ |
8月30日、ジャパンラグビー トップリーグが新たな一歩を踏み出す。
11年目のシーズンとなる今季は、過去最多となる16チームが日本最高峰の熱きバトルに参戦。8チームずつ2プールに分かれてファーストステージが戦われた後、それぞれの上位4チームずつ、下位4チームずつの2プールに再編成されたセカンドステージへと突入することになる。
プレーオフ進出のためには、前半戦のファーストステージで4位以内に入ることが絶対条件。ということは、これまでよりもシーズンのスタートダッシュに成功するか否かが大きな意味を持つようになることも確かだ。
昨季の最終成績によって2プールに分けられたファーストステージのプールA、プールBは、それぞれ以下の8チームずつで構成されている。
<プールA>
サントリーサンゴリアス(昨季1位)
神戸製鋼コベルコスティーラーズ(同4位)
トヨタ自動車ヴェルブリッツ(同5位)
NECグリーンロケッツ(同8位)
NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(同9位)
九州電力キューデンヴォルテクス(同12位)
NTTドコモレッドハリケーンズ(同13位)
豊田自動織機シャトルズ(同トップチャレンジ3位=昇格)
<プールB>
東芝ブレイブルーパス(同2位)
パナソニック ワイルドナイツ(同3位)
ヤマハ発動機ジュビロ(同6位)
近鉄ライナーズ(同7位)
リコーブラックラムズ(同10位)
キヤノンイーグルス(同11位)
コカ・コーラウエストレッドスパークス(同トップチャレンジ1位=昇格)
クボタスピアーズ(同トップチャレンジ2位=昇格)
本稿では今まで以上に大きな意味を持つことになりそうな開幕節の見どころを開催日ごとに紹介。
まずは、プレシーズンマッチで全敗という非常事態と言ってもいい状態でシーズンインを迎えることになった王者サントリーに、昨季の第1節で東芝を追い詰め、第2節ではパナソニックから金星を奪ったNTTコムがチャレンジする、30日の開幕戦プレビューから。
■サントリーサンゴリアス - NTTコミュニケーションズシャイニングアークス
8月30日(金)19時 東京・秩父宮ラグビー場
昨季、トップリーグ、日本選手権合わせて無敗で完全制覇を果たした王者がプレシーズンでは負けまくった。
春から夏にかけてのトップリーグチームとの練習試合で7戦7敗(Aチーム)。
夏合宿最終戦(8月3日)ではヤマハ発動機に、恒例となっているプレシーズン最終調整試合である"府中ダービー"では東芝に、それぞれ完敗。
LO真壁伸弥主将は「正直、不安しかない」と、3連覇に向けて、とても盤石とは言えない現状であることを認める。
その一方で、大久保直弥監督は「ピーキングはあくまで開幕に持っていく」ことを強調。
「昨シーズンのスクラム、ラインアウトに関しては納得できていない」(同監督)だけに、春から筋力アップをひとつのテーマに鍛え上げてきた。
前述の東芝戦でも、FWの力強さではひけをとらなかった。
どこまでもボールをキープし続けて、アタックし続けるスタイルに変わりはないが、課題だったセットプレーからの攻めが進化しているのは間違いないところ。
プレシーズンマッチではプレーしなかったFLジョージ・スミスとSHフーリー・デュプレアの千両役者が揃って開幕戦の先発に名を連ねる一方、NO8には昨シーズン後半戦を棒に振った竹本隼太郎・前主将が復帰。
勝つことを知り尽くした経験豊かなメンバーが並ぶ中、右WTBにはこの試合がデビュー戦となる3年目の俊足、長野直樹が起用されている。
若きスピードスターの決定力が王者のラグビーにどんな化学変化を与えるのかにも注目したい。
一方、開幕戦で王者にチャレンジするNTTコムにとってはトップリーグ4年目のシーズンとなる。
前述のとおり、昨季は第2節でパナソニックを破るなど7勝6敗と勝ち越して9位。
当然ながら今シーズンはファーストステージで4位以内になり、セカンドステージでは上位グループで戦うことを目標にしている。
そのためにも、開幕戦でいきなり王者にひと泡吹かせて勢いに乗りたいところ。
トップリーグ3年目となる、元オールブラックスのLOアイザック・ロスに加えて、今季は新たにやはりニュージーランド代表として15キャップを誇るLOジェイソン・イートンが加入。
「若いチームが格上のチームと対戦して結果を出していくためには、準備が全て」と語る林雅人監督はいきなり、この共に2mを超えるツインタワーを揃って開幕戦の先発に起用することを決断。
圧倒的なラインアウトでの制空権とスクラムでの重さを増して、まずはセットプレーで優位に立つことで王者にプレッシャーをかけていくことで、勝機を見出していくことになりそうだ。
「この暑い時期でボールも滑るだろうし、そういう条件の中でもサントリーはアタックしたいだろうし‥‥というあたりは当然考えての試合になる。グラウンドの中のどこのエリアで戦うのかというのを明確にしながらプレーしていきたい」(WTB友井川拓主将)
昨季のリーグ戦全試合で先発したSO君島良夫をリザーブに置き、左足キックの得意なSO川本祐輝を指令塔に据える、新たなゲームコントロールスタイルがどう機能するのかもポイントになりそうだ。
(text by Kenji Demura)
サントリーサンゴリアスのベテラン小野澤選手。開幕戦からメンバー入り |
NTTコミュニケーションズシャイニングアークスの友井川キャプテン |