“チャレンジャー”サントリーの3連覇なるか
好調パナソニックがトップリーグタイトル奪還か
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まずは接点でどちらが前に出られるかがポイントか(パナソニックHO堀江主将/サントリーLO真壁主将) |
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バーンズが余裕を持ってゲームメイクできるようだとパナソニック優位は動かない |
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パナソニックの攻守に激しく前に出るFWの象徴的存在NO8ホラニ |
2月11日、東京・秩父宮ラグビー場でプレーオフトーナメントファイナル、パナソニック ワイルドナイツ - サントリーサンゴリアス戦が行われる。
トップリーグ3連覇を目指すサントリーと、三洋電機時代の2011年以来の日本一を目指すパナソニック。
両チームがプレーオフファイナルで顔を合わせるのは4度目。過去の対戦では2勝1敗とサントリーがリードしている。
それでも、サントリーの大久保直弥監督が「チャレンジャーとしてパナソニックに挑みたい」と語るように、今シーズンの両者の戦いぶりを振り返るなら、王者サントリーの立場はむしろ挑戦者に近いものと言えるかもしれない。
今季の両者の直接対決は昨年12月14日のセカンドステージ第3節。
前半9分のSOベリック・バーンズを皮切りに計5トライを重ねたパナソニックが攻守にサントリーを圧倒して、42-13という大差での勝利を収めている。
1週間前のセミファイナルでも、両チームの戦いぶりは対照的だった。
前半3分のNO8ホラニ龍コリニアシの先制トライを皮切りに計8トライを奪うなど、東芝ブレイブルーパスをまったく寄せ付けなかったパナソニックに対して、神戸製鋼コベルコスティーラーズに後半20分過ぎまでリードを許すなど、苦戦しながら何とかファイナルにたどり着いたサントリー。
今季ここまでの戦いぶりや現在の勢いを考えてみると、パナソニックに分があるのは覆し難い事実だと言っていいだろう。
「ブレイクダウンが強みになっている」とHO堀江翔太主将が胸を張る通り、パナソニックはセミファイナルでもフィジカル面で自信を持っている東芝に対して、コンタクトエリアで圧倒。
プレーオフ前に中嶋監督が「FWが前に出ることが重要」という観点からキーマンに挙げていたNO8ホラニが先制トライを奪ったことが象徴しているとおり、ひとりひとりが接点で前に出続けた上に、SOバーンズが完璧なキックでエリア的にも優位な戦いを続けた。
チームきってのトライゲッターであるWTB山田章仁がクイックパスで前述のホラニの先制トライをお膳立てしたり、前半26分にはキックでFB笹倉康誉のトライをアシストしたり、チャンスでのBKの判断力も圧倒的でまさに手がつけられない状態だ。
パナソニックSH田中はリザーブスタート
サントリーは昨季のヒーローWTB村田が先発
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サントリーSO小野が鉄壁のパナソニックDFを突き破るシーンはあるのか |
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やはり、この男のビッグプレーがサントリーのV3に不可欠か。FLスミス |
そんなふうにセミファイナルで完璧と言っていい内容の試合を見せたパナソニックの先発メンバー変更は1ポジションだけ。
SH田中史朗がリザーブに回り、イーリニコラスが先発する。
田中がセミファイナル後にニュージーランドに戻り、再合流が直前になるための処置だが、パスさばきだけではなくゲームメーカーとしても圧倒的な存在感を誇る田中不在がどう影響するかは、ひとつのポイントになるかもしれない。
一方の王者サントリーもセミファイナルの神戸製鋼戦メンバーからWTB長友泰憲をリザーブに回して村田大志を先発させる“マイナーチェンジ”でパナソニックに挑む。
神戸製鋼戦でも、最終的にはブレイクダウンの精度で上回ったことが逆転勝利につながったが、ファイナルでのポイントも同じだろう。
プレーオフ前に大久保監督が「いかに小野がいいプレー選択をしてくれるか。そして、FWがどれだけ小野にいい選択肢を与えられるか」と語っていたとおり、アタックのキーマンになるSO小野晃征が余裕を持ってプレーするためにも、FWがセットプレーとブレイクダウンで奮闘してボールキープし続けられるか。
アタッキングラグビーを標榜するサントリーにとっては永遠の命題と言えるテーマだが、ディフェンスでのターンオーバーからトライを取り切ることに関しては他を圧する能力を誇るパナソニックが相手だけに、ブレイクダウンでターンオーバーされることは致命傷につながる。
大一番で先発することになったWTB村田は昨季のファナルで2トライを記録した選手。
1週間前の神戸製鋼戦で勝ち越しトライを決めたNO8小澤直樹も再び先発メンバーに名を連ねている。
「小澤は今シーズン一番練習してきた選手」(大久保監督)という通り、ここ一番で抜擢された若手が大きな仕事をやってのけるのも、普段のハードワークがあるからこそ。
FLジョージ・スミス、SHフーリー・デュプレアを筆頭に「平(浩二=CTB)、篠塚(公史=LO、青木(佑輔=HO)、佐々木(隆道=FL)……どこで仕事をしなきゃいけないかわかっている選手」(大久保監督)という勝ちを知り尽くしたメンバーに加えて、リザーブの新人PR石原慎太郎も含めて意外な選手がここ一番で働いた時、サントリーの3連覇が見えてくるのかもしれない。
セミファイナルでは、リーグ戦で得点王に輝いたCTBニコラス ライアンが3本のプレースキックを外すなど、やや当たりが悪かった感もあったが、パナソニックにプレッシャーをかけていくためにも、しっかりボールキープを続けながら、ニコラスのPGで確実に得点を重ねていくことも重要になりそうだ。
(text by Kenji Demura)