いよいよレギュラーシーズンも最終節。前節では、リコーブラックラムズを39-14で下した東芝ブレイブルーパスの3位以上が確定したが、トップ4最後の椅子を、勝ち点41のNECグリーンロケッツと37の神戸製鋼コベルコスティーラーズが争う。
下位に目を転じれば、自動降格回避に燃えるNTTドコモレッドハリケーンズとHonda HEATが、それぞれNEC、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスを破って勝ち点5を獲得。トヨタ自動車ヴェルブリッツから終了直前に4トライ目を奪って勝ち点2を加えたコカ・コーラウエストレッドスパークスと三つ巴で、壮絶な順位争いが繰り広げられる。
また、4日福岡のレベルファイブスタジアムではトップチャレンジ1第2節も予定されており、共に第1節で勝利を収めたキヤノンイーグルスとクボタスピアーズが直接対決(第1試合=12時キックオブ)。第2試合の九州電力キューデンヴォルテクス-豊田自動織機シャトルズ戦(14時キックオフ)の結果如何では、第1試合の勝者が来季のトップリーグへの昇格を決める可能性もある。
プレーオフ最後の1枠に勝ち残るのはNEC? 神戸製鋼、奇跡の逆転4強の可能性は?
自動降格を免れるのはNTTドコモ? Honda? それともコカ・コーラウエスト?
4位NECとの勝ち点差4の5位につける神戸製鋼。首位サントリーにひと泡吹かせて奇跡のプレーオフ進出の可能性は…(写真はPR平島主将) |
最終節最大の注目は、プレーオフ進出をかけたNECグリーンロケッツと神戸製鋼コベルコスティーラーズの争いだ。
前節でNECは、自動降格回避へ危機感を募らせたNTTドコモレッドハリケーンズに終始押し込まれ、19-28と1ポイントも獲得できずに敗れた。勝ち点5を獲得すればプレーオフ進出という条件を「意識し過ぎてトライを取り急いだ」(CTB田村優)結果の、手痛い敗戦だった。
ところが翌29日、追う立場の神戸製鋼コベルコスティーラーズが、終了間際のPGチャンスを生かせずにヤマハ発動機ジュビロに16-16と引き分けて、両者の勝ち点差は4。
今節4日に近鉄ライナーズと対戦するNECが(14時 近鉄花園ラグビー場)、この試合で2ポイント以上獲得すれば4位が確定し、プレーオフ進出が決まる。
この試合のカギを握るのが、今季トライランキングを独走中のネマニ・ナドロ。
NTTドコモ戦では厳しいマークにあってノートライに終わったが、花園の熱狂的な近鉄サポーターの前で、北川智規(パナソニックワイルドナイツ)が06年度に作ったシーズン通算19トライのトップリーグ記録更新に挑む。ナドロがトライを挙げれば、その分プレーオフが近づくことになる。
一方の近鉄は、前節でパナソニックに22-25と敗れてトップ4入りが絶望となったが、8位以内が確定。ワイルドカード出場を決めた。高さに欠けるNECに、ともに身長196センチのトンプソン・ルーク、ルア・ロコツイのツインタワーでラインアウト制圧を目論む。
神戸製鋼は5日にサントリーサンゴリアスと対戦する(12時 秩父宮ラグビー場)。
前日にNECが1ポイント獲得して敗れた場合はサントリーから4トライ以上奪って勝てば、NECが0ポイントに終わった場合は、勝てば総得失点差でNECを上回り、トップ4が決まる。
いずれにしても、サントリーの防御を「ムービング・ラグビー」で崩すことが絶対条件。平島久照主将は、第11節でパナソニックに惜敗(27-29)したあとで「このレベルでも問題なく自分たちのラグビーができる」と手応えを口にしており、サントリー戦を今季の総決算と位置づける。
サントリー-神戸製鋼戦後にはパナソニック-東芝の"前哨戦"も
自動降格圏脱出をかけた下位3チームの順位争いでは、NTTドコモが勝ち点を14に伸ばして12位に浮上。一歩リードした。4日に福岡サニックスブルースと対戦する(12時 近鉄花園ラグビー場)が、4トライ以上取って勝てば自力で降格を免れることができる。
1差でNTTドコモを追うHonda HEATはヤマハと(5日13時 ヤマハスタジアム)、現在14位のコカ・コーラウエストレッドスパークスはNTTコミュニケーションズシャイニングアークスと(5日13時 レベルファイブスタジアム)、それぞれ対戦する。
両チームは総得失点差でNTTドコモを上回っており、4日の結果次第では自動降格回避の可能性が出てくる。HondaはNTTドコモに勝ち点で並ぶか上回り、かつコカ・コーラを上回ることが条件。コカ・コーラは一番条件が厳しく、12位に浮上するのは、NTTドコモとHondaが敗れてかつ勝ち点で上回った場合と、3チームが同勝ち点で並んだ場合のみ。
3チームとも、とにかく4トライ以上取って勝つことが必要な状況に変わりはなく、12位浮上に向けてボールを大きく動かす積極的なラグビーが期待できそうだ。
最後に、2位のパナソニックと3位東芝ブレイブルーパスとのライバル対決(5日14時 秩父宮ラグビー場)も、プレーオフを占う上で見逃せない一戦だ。このままサントリーが首位でレギュラーシーズンを終えれば、両者は19日のプレーオフ・セミファイナルでふたたび顔を合わせることになる。東芝の和田賢一監督は「最終節のパナソニックに全力を尽くすのみ」と話すが、両チームとも同じカードでの連戦は、本音では避けたいところ。第1試合のサントリーの結果次第だが、こちらも5ポイントを獲得する積極果敢なラグビーが見られそうだ。
NECは近鉄から勝ち点2以上を取れば自力でのプレーオフ進出が決まる。前節はNTTドコモに完敗したFWが立ち直れるか(写真は新人PR田中) |
12位のNTTドコモは福岡サニックス相手に4トライ以上奪っての勝利を収めれば、自動降格を免れることに(写真は攻守に存在感を見せるCTB中矢) |
12位NTTドコモとの勝ち点差は1。Hondaはまずは最終節でヤマハ発動機に勝つことに集中する(写真はLO塚本) |
神戸製鋼と対戦する首位サントリーはレギュラーシーズン1位通過を確定できるか(写真はPR畠山) |
松田努
(東芝ブレイブルーパス FB)
◇現役最年長FBは、あくまでも「自然体」
松田 努◎まつだつとむ◎1970年4月30日生まれ。身長180cm、体重90kg。草加高校→関東学院大学→東芝ブレイブルーパス。日本代表キャップ43 |
東芝ブレイブルーパスFB松田努が、リコーブラックラムズ戦の前半12分に挙げた先制トライに沸き立ったのはスタンドのサポーターだけではなかった。ピッチにいるチームメイトも全員、喝采を送った。41歳8ヶ月29日。自らが持つトップリーグ最年長トライ記録を更新したからだ。
「毎試合、ジョン(松田の愛称)さんにトライして欲しいと思っていたので、盛り上がりました。今日は誰がどんなにいいプレーをしても、マンオブザマッチはジョンさんで決まりだと思っていましたから」と振り返ったのは、不本意ながら(?)も、この試合のマンオブザマッチに輝いたHO湯原祐希。
前キャプテンのWTB廣瀬俊朗も、「あのトライは嬉しかった」と祝福の言葉を贈った。
「まだゲームの序盤でしたが、みんなが“おめでとう”と言ってくれました。今シーズンの初トライですけど、だったら回転トライでもすれば良かったですかね(笑)」
そう笑ったあとで、松田は現役を続行する秘訣をこう明かした。
「今、ラグビーをやることが楽しいんですよ。もちろん、キツイと感じる瞬間もあるし、疲れが取れるまで時間がかかりますけど、勝ってみんなと喜ぶのが楽しい。それがモチベーションになっています。どんなに疲れていても、気持ちを切り替えて、いつもと変わらないことをやるのが、長続きしている秘訣でしょうね。現役を続ける気持ちがいつ切れるかわかりませんが、僕には“ラグビーをやりきった”と思うようなことがない。それも、気持ちが切れない理由かもしれません」
91年の第2回W杯に日本代表として選ばれたのは21歳のとき。以来、03年の第5回W杯まで4大会連続で代表入りを果たし、日本代表キャップも43まで積み上げた。それでも、若い選手たちと同じ練習メニューで汗を流し、練習後には「ふざけ合って」以前と変わらぬペースを保っている。だからこそ、気持ちが切れないのだ。
プレーぶりも、今季はちょっと変わった。
FBでありながら、頻繁にブレイクダウンに入ってボールを奪い合う。まるで、関東学院大学でFBにコンバートされる以前のポジション、FLに戻ったようなプレーを見せているのだ。
「確かにブレイクダウンに入る機会は増えました。今季はマイケル・リーチが加わってFWにランナーが増えた。その分、人数が足りないときは意識して入るようにしているんです」
もちろんFBとしての、相手キックに対するポジショニングや、前に上がってタックルするか、上がらずに待って相手が攻めるスペースを埋めるかの判断は、他のFBの追随を許さない。
かつてともにプレーした1学年下の和田賢一監督は、そんな松田をこう評する。
「松田は、練習から、自ら行動する部分で一貫性を保って、若手から先発を勝ち取っている」
東芝のラグビーを熟知し、的確な状況判断を下せることが、評価されているのだ。
リコー戦でプレーオフ進出を決めた東芝は、無冠に終わった昨季の雪辱を期すが、それは松田も同じ。41歳の今もなお、タイトルに執着しているのだ。
「今までに何度も優勝は経験していますが、過去の記憶はどんどん薄れて行くので、その年その年の一番新しい優勝が、一番嬉しい。だから今季も優勝を狙いたい」
それはまた、昨年秋からブレイブルーパスジュニアでラグビーを始めた小学4年生の次女・凛日(りんか)ちゃんに、父としての雄姿を見せる瞬間にもなる。
(text by Hiromitsu Nagata)