第2節を終えて、全勝はヤマハ発動機ジュビロ、東芝ブレイブルーパス、サントリーサンゴリアス、近鉄ライナーズの4チームのみ。そのうち2チームが今節は東日本大震災で被災した東北地方でプレーする。
岩手に東芝、仙台にサントリーが登場!
震災後の復興と被災者支援の一助の願いを込めて、盛岡と仙台でトップリーグの試合が行われる(写真は12日に盛岡に登場する東芝FLリーチ) |
第3節は、12日には、岩手県の盛岡南公園球技場で東芝ブレイブルーパス対NTTドコモレッドハリケーンズ戦(14時キックオフ)、翌13日には宮城県のユアテックスタジアム仙台でNTTコミュニケーションズシャイニングアークス対サントリーサンゴリアス戦(13時キックオフ)と、3月11日の東日本大震災で被災した東北地方で2試合が開催される。
これは、「FOR ALLニッポンのために」を掲げるトップリーグが、震災後の復興と被災者支援の一助になればとの願いを込めて開催するもので、12日には来季のトップリーグ昇格を目指すトップイーストの釜石シーウェイブス対キヤノンイーグルス戦(12時キックオフ)も予定されている。
現在2位の東芝に挑む今季初昇格のNTTドコモは、前節はサントリーに15-46と敗れたものの、随所で好タックルを見せて食い下がった。FLで攻守に活躍する箕内拓郎を筆頭に、今週も粘り強い防御で東芝を苦しめて、手応えを確固たるものにしたいところだ。
勝ち点9で3位につけるサントリーは圧倒的な攻撃力が武器だが、NTTコムも、今季は元NZ代表LOアイザック・ロスが加わって潜在能力は高い。ロスと元豪州代表ジョージ・スミスとの1対1のマッチアップも見られそうだ。
サントリーのSOトゥシ・ピシ(サモア)、LOダニー・ロッソウ、SHフーリー・デュプレア(ともに南ア)、FLトッド・クレバー(アメリカ)ら、W杯で活躍した選手たちのプレーぶりにも注目したい。
■花園では「全勝対決」
第3節のもう一つの注目カードは、勝ち点10、得失点差65で首位を走るヤマハ発動機ジュビロと、勝ち点8で4位につける近鉄ライナーズとの「全勝対決」(12日13時大阪・近鉄花園ラグビー場)。
ヤマハが清宮克幸新監督のもとでスクラム強化などチームの軸を整備して連勝すれば、近鉄も前田隆介新監督のもとでチームに求心力が生まれている。こちらは、昨季まで指揮を執ったピーター・スローンHCが残した、個々のタックル技術や骨惜しみしないブレイクダウンといった遺産を、上手くゲームに生かしている印象だ。
ヤマハが2試合で100得点と抜群の得点力を誇るだけに、近鉄にとってはいかにヤマハの攻撃の起点を後ろに下げるかが重要になってくる。SO重光泰昌を筆頭に、キックを有効に使いながらゲームをコントロールしたいところだ。
それに対して、FB五郎丸歩らヤマハのバックス陣がいかに切り返して主導権を握るか。そんなキックの使い方と対抗策がこの試合の見所になる。
一般的に、相手が陣地をとるために蹴ってきたボールを単純に蹴り返してタッチに出すと、次のプレーは相手ボールのラインアウトから始まる。これでは相手に攻め込まれて、たとえボールをターンオーバーしてももう一度タッチに逃れる悪循環に陥ってしまう。
そんな悪循環を断つためにどんな手を打つか。そこにチームの知性が表れる。
開幕戦から連勝と波に乗る両チームが、どんな知性を発揮してゲームをコントロールするか。数手先を読んだ駆け引きをじっくり堪能しよう。
前節でサニックス相手に勝ち点5を奪ったNTTコムは仙台でサントリーに挑戦する(写真右上はFWの核になるLOロス) |
開幕2連勝で勢いに乗る近鉄は地元・花園でヤマハとの全勝対決に挑む(写真はゲームメイクに期待がかかるSO重光) |
前節のNTTドコモ戦に続いて南ア代表としてW杯でも活躍したサントリーSHデュプレアのプレーが見られるか? |
前節のサニックスLOソーンに続いて、今節ではリコーCTBノヌーがトップリーグ初先発を果たす |
ブラッド・ソーン
(福岡サニックスブルース LO)
◇サニックスを選んだ"世界一"の鉄人FW
ブラッド・ソーン◎1975年2月3日、NZモスギール生まれ。196cm、115kg。ブリスベン・ブロンコス(豪13人制ラグビーリーグ)、クルセイダーズなどを経て福岡サニックス入り。NZ代表キャップ数59。 |
W杯閉幕からたったの2週間。
大方の予想よりもだいぶ早く、オールブラックスの24年ぶりのW杯制覇に貢献した鉄人FWが、福岡サニックスブルースの一員としてトップリーグ初先発を果たした。
「W杯の後で肉体的にというよりは精神的に疲れている感じはするけど、今日は仕事もできたし、コンタクトプレーを楽しむこともできたよ」
11月6日、激しい雨が降り続いた新潟・東北電力ビッグスワンスタジアムで59分間プレーしたLOブラッド・ソーンは、ピッチ上での激しいプレーぶりとは180度異なる柔和な表情でそう語った。
先のW杯では、9月9日の開幕戦から10月23日の決勝戦まで、地元NZが戦った7試合全てに出場。
そのうち6試合で先発し、決勝トーナメント3試合でフル出場を果たすなど、オールブラックス首脳陣からの信頼度は抜群。196cm、115kgの強靭な肉体と確かな仕事量で、セットプレーでも密集戦でも世界最強軍団のベースを支え続けた。
NZ出身ながら8歳で移り住んだ豪州で13人制ラグビーリーグの同国代表にも登り詰めた事実も、その類い稀なるフットボーラーとしての能力の高さを示していると言っていいだろう。そして、新しい環境への適応力も。
「サニックスのアタックは本当に素晴らしい。スクラム、そしてモールを強化できれば、もっと上にいけるチーム。もちろん、自分に求められていることもわかっている」
これまで、対戦相手をパニックに陥れるほどのアタック能力を誇りながら、セットで崩されて苦しい展開に持ち込まれることも少なくなかったサニックスにとっては、これ以上ない助っ人であることは間違いないだろう。
「スクラムを押す力はやっぱり強い。これから一緒に練習していけば、どんどん合うようになると思う」
サニックスHO永下安武主将は、来日から5日後、わずか2回のチーム練習だけで先発出場を果たした"鉄人"に対する印象をそんなふうに語る。
「NZや豪州とは違う場所でラグビーをして、その国のカルチャーを知ってみたかったんだ。福岡にはインターナショナルスクールもあるし、4人の子供たちの教育のためにもいい場所だと思った」というのが、世界中からの数多くのオファーの中で、ソーンがサニックスを選んだ理由。
「まだハーフタイムでの指示がわからなかったり、コミュニケーションの部分でも問題もあるけど、世界中どこへ行ってもラグビーはラグビー。早く日本語も話せるようにならないとね」
"世界一"の鉄人FWの力強いプレーが、奔放なサニックスのアタッキングラグビーのベースをしっかり支えるようになるのは、そう遠くない未来のことなのかもしれない。
(text by Kenji Demura)