トップリーグ2011-2012特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
昨シーズンに引き続き、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第13節(2/4-2/5)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
2/4(土) 12:00 NTTドコモレッドハリケーンズ 26-37 福岡サニックスブルース 近鉄花園
2/4(土) 14:00 近鉄ライナーズ 31-22 NECグリーンロケッツ 近鉄花園
2/5(日) 12:00 サントリーサンゴリアス 32-28 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 秩父宮
2/5(日) 13:00 ヤマハ発動機ジュビロ 35-5 Honda HEAT ヤマハ
2/5(日) 13:00 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 19-22 リコーブラックラムズ 瑞穂
2/5(日) 13:00 コカ・コーラウエストレッドスパークス 36-42 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス レベスタ
2/5(日) 14:00 東芝ブレイブルーパス 59-25 パナソニック ワイルドナイツ 秩父宮

マッチレポート

神戸製鋼、4強へあと1歩届かず。サントリーが1位通過決める

5日、トップリーグ最終節、残り5試合が行われ、後半34分に飛び出したWTB長友泰憲のトライで神戸製鋼コベルコスティーラーズに劇的な逆転勝ちを収めたサントリーサンゴリアスのレギュラーシーズン1位通過が決定。敗れた神戸製鋼はあと1歩プレーオフに届かず、前日近鉄ライナーズに敗れたNECグリーンロケッツが4位をキープしてプレーオフセミファイナルでサントリーサンゴリアスに挑戦することになった。
一方、2位、3位同士の対戦となった東芝ブレイブルーパス-パナソニック ワイルドナイツ戦は59-25で東芝が圧勝。両者は2週間後のプレーオフで再び顔を合わせる。
残留争いでは、前節まで13位のHonda HEATと14位のコカ・コーラウエストレッドスパークスが共に敗れて両チームの来季の自動降格が確定。11位福岡サニックスブルースと12位NTTドコモレッドハリケーンズは入替戦へ。
また、レギュラーシーズン5位近鉄ライナーズ、同6位神戸製鋼、同7位リコーブラックラムズ、同8位ヤマハ発動機ジュビロは日本選手権出場権をかけて争われるワイルドカードトーナメントに回ることになった。

 
 

神戸製鋼の激しいプレーに苦しみながらも要所でトライを奪って逆転勝ちしたサントリーがレギュラーシーズン1位通過(写真はSOピシ)
photo by Kenji Demura (RJP)

■サントリーサンゴリアス 32-28 神戸製鋼コベルコスティーラーズ(前半17-18)──2月5日

■東芝ブレイブルーパス 59-25 パナソニック ワイルドナイツ(前半26-5)──2月5日

 前日、NECグリーンロケッツが近鉄ライナーズに敗れたことで、最終戦で勝てばプレーオフ最後の1枠となる4位入りを決められる状況となった神戸製鋼コベルコスティーラーズ。
 ケガやコンディションの影響もあったが、首位サントリーサンゴリアスを倒すために、苑田右二ヘッドコーチが秩父宮ラグビー場のピッチ上に送り込んだメンバーは、前節までとはやや異なる面々となった。
「グラウンドコンディションの問題もあったので、まずは元気なメンバーを選んだのと、(チャレンジャーとして)ギャンブルしていかないといけいない面もあった」(同ヘッドコーチ)

 共に前節のヤマハ発動機ジュビロ戦で途中退場していたPR平島久照主将、SOピーター・グラントのうち、平島主将は22人から外れ、グラントは控えメンバーにこそ名を連ねたが、結局80分間プレーすることはなかった。
 スクラムの面ではやや不安はあるものの、フィールドプレーでのインパクトでは一線級のPR安江祥光、そして「ギャンブル」の象徴とも言えた、40歳の大ベテラン伊藤剛臣のLOへの起用。
 BKでもCTBにジェーソン・カワウ、フレイザー・アンダーソンという強烈な両外国人を並べ、とにかく前に出る姿勢を強く打ち出した神戸製鋼の攻撃的なラグビーは、1万人を超える大観衆を大いに沸かせた。

「ラグビーは本に似ている。スタートとエンディングが最も大切」
 試合は、そんな"哲学"を持つエディー・ジョーンズ監督が率いる首位サントリーが、監督の教えどおりに開始2分にモールからFL元申騎が飛び込んで先制。
 ただし、試合後、ジョーンズ監督が「試合中盤のパフォーマンスは良くなかった」と認めたとおり、先制した後は、終盤の時間帯までどちらがチャンピオンチームかわからない、神戸製鋼の迫力ある攻めにサントリーがタジタジになる場面も少なくなかった。

エディーの哲学通り試合の入りと締めで優ったサントリー

 前半17分に先制トライのお返しをするかたちで、モールからPR山下裕史がジョージ・スミス(サントリーFL)に覆いかぶさるようにグラウンディングして神戸製鋼が逆転。
 33分にサントリーLO篠塚公史にトライを許して再びリードされたものの、前半終了間際に自陣からCTBコンビの突破でチャンスをつくり、自ら上げたショートパントを拾ったアンダーソンからフォローしたFLジョシュ・ブラッキーへとラストパスをつないで再逆転(18-17)に成功してハーフタイムを迎えた。

 前半でSO山本大介が痛んだこともあって、後半開始早々からBKのメンバーチェンジを余儀なくされた神戸製鋼だったが、その選手交代においても「攻める」姿勢は貫かれた。
 山本に代わって投入されたのはグラントではなくWTB中濱寛造。CTBに両外国人選手を残したまま、SOのポジションにはFBから正面健司が上がった。
「最後はPG合戦になることも想定して、そういう状況になったらグラントを投入するつもりだった」(苑田ヘッドコーチ)
 首脳陣の中では、あらかじめゲームプランのひとつとして考えられていたふしもある正面のSO起用だが、任された本人にとっては「ぶっつけ本番」。
 ただ、前述どおり「攻める」姿勢を前面に出していたこの日の神戸製鋼にとって、攻撃センス溢れる指令塔SO=正面が絶妙なマッチングをみせたのも事実ではあった。

 前半同様、サントリーがジョーンズ監督の教え通りに立ち上がりからペースをつかみ、10分までにSHフーリー・デュプレアのトライとCTBニコラスライアンのゴールおよびPGで引き離しにかかったが、神戸製鋼も再びモールからのトライと正面のゴールとPGで後半30分時点で28-27とこの日2度目のリードを奪うことに成功。

 トライ自体はモールをサントリーが崩し続けたことへのペナルティトライだったが、指令塔に正面を据えてどんどんボールを動かし続けた神戸製鋼のアタックにサントリーがたじたじになる場面も数多くあった。それでも、この日コベルコスティーラーズのゲームキャプテンを務めていたLO伊藤鐘史が「要所要所の細かいミスが勝敗を分けた。高いレベルになればなるほどベーシックなスキルの差で勝負が決まることを実感した」と語ったとおり、最後に勝負を分けたのは、ここという場面での細かいプレーの精度だったかもしれない。

 象徴的だったのは、後半21分に神戸製鋼が自陣からカウンターを仕掛けてサントリーゴールに迫ったシーン。トライまであと一歩のところのブレイクダウンでボールを奪ってピンチを救ったのはサントリーPR畠山健介。
 逆に、サントリーの決勝トライはFB有賀剛の好パスはあったものの、神戸製鋼ファンにとってはサントリーWTB長友泰憲と1対1になったCTBアンダーソンに止めてもらいたかったものだっただろう。

「攻めたらトライが取れると感じていたし、逆転されて残り10分を迎えても、全然大丈夫だと思っていた」(サントリーFL佐々木隆道)
 冒頭で紹介したジョーンズ監督のラグビー哲学通りに試合のスタートとエンディングだけは完全にものにしてレギュラーシーズン1位通過を決めたサントリー。
 今季の神戸製鋼が、東芝ブレイブルーパスを破り、パナソニック ワイルドナイツ、そしてサントリーを追い詰めながらも、あと1歩4強に届かなかった理由がこの日の4点差での敗戦に凝縮されていると言っても過言ではない、象徴的な試合ともなった。

 第1試合でサントリーが勝ち点5を獲得したことで、ほぼ2週間後のセミファイナルでも同じ顔合わせでの再戦が確実な状況で行われた第2試合のパナソニック ワイルドナイツ対東芝ブレイブルーパス戦は、前に出る迫力で圧倒した東芝が9トライを奪う予想外の大勝ぶり(59-25)。
 ケガ人の関係もあって、ベストとはほど遠いメンバーで戦わざるを得なかったパナソニックが2週間でどう立て直してくるのか。CTB霜村誠一主将も8試合ぶりに復帰するなど、プレーオフモードと言っていいメンバー構成となった試合終盤は好調・東芝と対等以上に戦ってみせた面もあるだけに、「2週間後には違うストーリーが待ち受けている」(途中出場したCTBジャック・フーリー)ことも間違いないだろう。

(text by Kenji Demura)

 

「今日はピシ、ニコラス(写真)、平のSO/CTBのコンビが良くなかった」(ジョーンズ監督)。サントリーはプレーオフへ課題も残した
photo by Kenji Demura (RJP)

後半SOに入った正面(写真)を中心に積極的なアタックでサントリーを翻弄する場面も多かった神戸製鋼は日本選手権でのリベンジを目指す
photo by Kenji Demura (RJP)

 

注目の2位、3位対決は東芝が圧倒。41歳の大ベテランFB松田も前節に続いてトップリーグ最年長トライ記録を更新する活躍を見せた
photo by Kenji Demura (RJP)

大敗したパナソニックだが、HO堀江(写真)など主力を投入した終盤は攻め込むシーンも多く、「2週間後は違うストーリー」(CTBフーリー)に?
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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NTTドコモ、痛恨の敗北。NECもトップ4決められず

トップリーグ第13節は、結果によって順位が大きく入れ替わる大混戦となっているが、4日(土)にまずは2試合が行われた。自動降格圏内からの脱出をめざし、必勝を期したNTTドコモレッドハリケーンズは、福岡サニックスブルースに敗れた。しかし、4トライ以上の勝ち点1をあげて計15点とし、日曜日の結果次第で入替戦進出への可能性を残した。土曜日時点で、HondaHEATは、勝ち点13点。コカ・コーラウエストレッドスパークスは、10点。最下位のコカ・コーラウエストも4トライ以上のボーナス点を獲得して勝利すれば、NTTドコモとならび、得失点差で上回る可能性がある。
NECグリーンロケッツはボーナス点をあげられず近鉄ライナーズに敗北。現在37点の神戸製鋼コベルコスティーラーズの結果次第で、41点のNECはプレーオフトーナメント進出の道を絶たれることになった。結局、この時点では、何も確定しなかった土曜日の試合を振り返ろう。

 
 

接点で激しくファイトして前半リードしたNTTドコモだったが、後半サニックスの変幻な攻めに逆転負け
photo by Tokinori Inoue

■NTTドコモレッドハリケーンズ 26-37 福岡サニックスブルース(前半12-8)──2月4日

NTTドコモは「4トライ獲りに行く」(アンドリュー・マコーミックシニアヘッドコーチ)という言葉通り、序盤から接点で激しくファイトした。しかし、気負いもあってか、自陣で反則を連発し、オフロードパスを次々に使うサニックスの高速アタックに防戦一方となる。なんとか、ブレイクダウン(ボール争奪局面)でボールを奪い返して対抗し、0-8とリードを許した7分には、サニックスWTB濱里耕平の独走をドコモFBミルズ・ムリアイナがゴールライン寸前で食い止める。このビッグプレーで流れが変わった。直後にFL鄭智弘がトライ、24分には、ドコモ陣ゴール前で得たPKからムリアイナが速攻をしかけ、最後は、CTB清瀬岳大がタックルを引きずりながら強引に逆転トライを奪って見せた。

前半を終えて12-8のドコモリード。このまま拮抗するかと思われたが、後半は完全にサニックスペースとなる。CTB小野晃征の緩急自在なステップ、パスに操られ、グラウンドを横幅いっぱいに使うサニックスのアタックが防御網に穴を作る。シリバ・アヒオ、カーン・ヘスケスと次々に投入されるインパクトプレーヤーもタックラーを翻弄。後半16分のヘスケスのトライは、まるでピンボールのようだった。右に左にタックラーにぶつかっては跳ね、くるりと体を反転させると、穴を見つけてゴールへまっしぐら。自陣からの圧巻の個人技だった。後半17分時点で、17-34と突き放されたドコモだが、ここからはひたすら4トライをめざし、35分、交代出場の宮里尚樹が右コーナーぎりぎりに飛び込み、かろうじてボーナス点「1」を獲得した。

「コカ・コーラのためにも頑張りたい」と話していたサニックスの藤井雄一郎監督。九州の仲間の自動降格圏内脱出に可能性を残す奮闘だった。

■近鉄ライナーズ 31-22 NECグリーンロケッツ(前半9-12)──2月4日

5位から8位以内を確定させている近鉄に対し、NECは勝てば、プレーオフトーナメント制度が導入されて初のトップ4入りとなる。この日のテーマは、「アタック、アタック、アタック」。トップ4入りへの過剰な意識をほぐそうという意味も込めてのテーマだったが、選手たちの動きは固かった。近鉄SO重光泰昌に3PGを決められて、ようやく目が覚めると、22分、CTB田村優のタイミングのいいロングパスからWTBネマニ・ナドロがリーグ記録に並ぶ19トライ目をあげて勢いに乗ると、30分には、PR猪瀬佑太がラックサイドをついてトライし、9-12と逆転する。「前半は悪くない。コンタクトエリアで立ってプレーできていないので、そこの修正をしたい」(NEC岡村要ヘッドコーチ)

だが、後半、ゲームを支配したのは近鉄だった。順位へのモチベーションではなく、このチームを勝つことで成長させたいというチームの一体感が伝わる戦いだった。この日の近鉄は、トンプソンルーク、タウファ統悦というFWの軸を怪我で欠いていたが、初先発のFL中井太喜が攻守に働き、FL佐藤幹夫、WTBリコ・ギアらが身体を張って突進。「NECはミドルエリアのディフェンスが強いので、その外側を崩していこうとしました」(近鉄・前田隆介監督)と、BKラインもワイドな展開でタッチライン際を攻め、坂本、ギアが次々とインゴールに飛び込んだ。今季の近鉄は的確な分析による攻撃が際立っている。NECのナドロのキックに対するポジショ二ングが不安定なところも研究し、意図的にナドロを狙ったキックを使って揺さぶった。「NECは力がある。そのNECにしっかり勝ってチーム力を一段階上げたかった。選手はよくやりました」。意図通りにNECを破った前田監督は満足げにほほ笑んだ。

高忠伸キャプテンは言った。「今季の近鉄は好調と言われますが、僕はその言葉は当てはまらないと思います。力がついているからこその順位です。今季は監督、コーチ陣が的確な練習を示してくれて、選手としてもやりやすいし、楽しい。若手のモチベーションが高く、自力がついていると思います。ワイルドカードも、リーグ戦と同じように一戦一戦、戦っていきたいです」

マン・オブ・ザ・マッチは、2ゴール、4PGと、正確なプレースキックで勝利に貢献した重光泰昌が選ばれた。

(text by Koichi Murakami)

 

サニックスに逆転負けも、翌日Hondaとコカ・コーラウエストが共に敗れたためNTTドコモは自動降格を免れた(写真は鋭い突破を見せたFLセテファノ)
photo by Tokinori Inoue

同じ九州勢である「コカ・コーラウエストのために」(藤井監督)、勝利をもぎ取ったサニックスだったが……
photo by Tokinori Inoue

 

WTBギアの2トライなどで近鉄が後半逆転。自力では4強入りを決められなかったNECだが、翌日、神戸製鋼が敗れプレーオフ進出が確定
photo by Tokinori Inoue

前半22分のトライでシーズン最多トライ記録に並んだNECのWTBナドロだが、チームの勝利には貢献できなかった
photo by Tokinori Inoue

 

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