東芝ブレイブルーパス 36-21 リコーブラックラムズ
【week5/2009年10月11日(日) at岩手・盛岡南公園球技場】
バックスタンドからメインスタンドに向かって吹く時折の強い風と、雲に運ばれたにわか雨もちらつく盛岡南公園球技場に、2千8百人を超える観衆を集めて行われたトップリーグ第5節・東芝ブレイブルーパス対リコーブラックラムズの試合は、東芝のキックオフで開始されました。
開始1分に東芝がPGで先制しましたが、その前のプレーで激しいタックルを行ったリコー・ラーカムが負傷退場し、激戦の予想される展開となりました。スクラムで優位に立つリコーは5分にPGを返して同点とした後、両チームはテンポの速い攻防を繰り返しますが、8分にリコーバックスのノッコンを東芝がすかさずターンオーバーし11番オトが左隅にトライ。ゴールも決まって東芝が10対3とリードします。
東芝に先制トライを許したリコーは果敢に攻め続けますが、相手ボールスクラムを押し切り得点チャンスを得るものの、ミスなどによりあと一歩でスコアを逃す惜しい展開でした。しかしながら押し気味に試合を進めるリコーは、21分にPGを決め10対6と追いかけます。
その後、効果的なキック攻撃でエリアを獲得した東芝は、ラインアウトからモールを作って押し切ろうと試みましたがリコーがモールを崩す反則を犯し、そのPGから速攻を仕掛け25分に12番ニールがトライ、さらに東芝は、31分、バックスのライン攻撃に参加した4番望月が見事なステップでトライし貴重な追加点を奪い24対6と優位にたちました。
そこからもリコーはあきらめずに攻め続けましたが、東芝はラックをターンオーバーし右に左に揺さぶりをかける連続攻撃で36分に12番ニールがトライし、29対6として前半が終了しました。
後半は出だしからリコーが押し気味に試合を進め、優位のスクラムで再三のPKを得て、5分にPGを決め29対9とします。その後、リコーが東芝に攻め込まれゴール前にくぎづけになる場面もありましたが、相手反則などを利用して前進を図り、再び、押し気味に試合を進めました。14分には10番河野がドロップゴールを狙いゴールポストにはね返ったボールを東芝がノッコン、そのスクラムで東芝がコラプシングをとられ、そのPKを基点にリコーの波状攻撃が始まりました。ラックをつくって2次・3次攻撃を繰り返し、16分に11番横山が左隅にトライし29対16と追いあげる展開となりました。
その後も、相手ミスからターンオーバーしたボールをキック攻撃するなどして相手ゴール前に迫るリコーは、29分、カウンターからのボールを攻めて相手反則を誘い、そのPKから速攻を仕掛けラインにつないで13番小松が右隅にトライ。ゴールはなりませんでしたが残り10分で29対21と8点差に追い上げます。
連続トライを許した東芝は、守りを攻めに転じました。追い詰められそうになったときに攻めに向かうことのできる気力をもった東芝は、35分、リコーの隙を突いて14番廣瀬が外から内に鋭く切り込み、2人3人と抜きさってトライ。ゴールも決まり36対21と引き離すことができました。
最後まで諦めずに攻めたリコー、追いつかれそうな場面でも、守りを攻めに転じた東芝。がっぷり四つの中味の濃いナイスゲームは、盛岡のラグビーファンに感動をあたえ、東芝が勝どきを上げるノーサイドとなりました。
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ローデン ヘッドコーチ(右)、池田キャプテン
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◎リコーブラックラムズ
○トッド・ローデン ヘッドコーチ 「東芝は前の試合で負けているので、修正をしっかりしてくるだろうとは予想していましたが、東芝はいい試合をしました。それに加えて、私たちの目指すプレーができていませんでした。
東芝にプレッシャーをあたえ続けられていたこともあるけれども、自分たちのスタンダードでプレーできていなかったことが敗因だ」
──優位に立っていたスクラムについての考え方は。
「スクラムは支配できていましたので、もっと押せると思いました。もっとプレッシャーをかけるべきだったが、早く球を持ち出しすぎるなど、我慢強さが足りなかったかもしれない」
──後半は中盤までリコーのペースで試合がすすんだが、後半の評価は。
「前半があまりにも悪かったので、後半が始まる前からまだプレッシャーがかかっているような状態でした。その状態だったので、スクラムは勝っているのに我慢ができない状態にあったと思う。自分たちでゲームに負けてしまったという感じがある」
○池田渉キャプテン 「今日の試合は相手がどうこうというよりは、自分たちがミスを犯すという技術的な面、また、気持ちの上でも修正していかなければならない問題があったと思っています」
──自分たちのミスが多かったというが最も悔いの残る場面は。
「たとえばノッコンをする前の状況の判断が遅いように思われる。それが結果的に前に出るタイミングを遅らせたりしてミスを連鎖させた原因だと思っている」
──ラーカム選手が序盤に退場したことの影響は。
「誰が退場しても、誰が出ても対処できる練習をしてきているので影響はない。ただし、特に前半は、見えないところでラーカムの退場が多少影響していたかもしれない」 |
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瀬川監督(右)、廣瀬キャプテン
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◎東芝ブレイブルーパス
○瀬川智広監督 「前半立ち上がりは思い通りのゲームプランで行くことができたが、後半はリコーの反撃に押され反則が多くなってしまった。このことを反省して、次のゲームにつなげていきたい」
──スクラムの評価、問題点は。
「一つは『当たれていない』ということ。8人まとまって当たれていないという問題がある。もう一つは、当たれたスクラムでも押されているケースもあるので、フロントローのスクラムワークという問題と、8人が同じアングルで押せていなかったということがある。いずれにせよ、ここまで押されたスクラムは記憶にないほどだ」
──この2週間、何にフォーカスをあてて練習してきたのか。
「トヨタ戦はボールを動かそうというプランの中で、偏ったチャンネルの攻撃になりつつあったので、グラウンドを幅と立体で広く使い、バックスとフォワードでボールをつなごうとした。
前半は良い形でラインブレイクができたが、後半はアタックよりもディフェンスをしている時間が長くなってしまった」
── 一番大きな課題は?
「久しぶりに経験するくらいスクラムが安定しなかった。決して弱いスクラムではないが安定していない。
また、後半に入ってからスクラム、ラインアウトで内側をブレイクされているディフェンスがあったので、個人の問題とチームの問題の両面から、セットプレーを修正しなければならない」
○廣瀬俊朗キャプテン 「素晴らしい環境でゲームができたことをうれしく思う。ゲームについては、後半に怠慢なところが出てしまったので修正していきたい。しかし、前半の入りや、前半のトライのとり方はこの2週間やってきたことの成果が現れたので喜んでいる」
──この2週間、何にフォーカスをあてて練習してきたのか。
「立ってプレーすることが大変重要だということを全員が統一して認識し、ボールをつなげようということをしてきた」
──後半、思うようにゲームが進められなかった理由は。
「ゴール前のスコアチャンスで得点できず、中盤まで戻されたりするケースがあり、さらに、ミスが重なってリズムが崩されてしまった。
ゴール前ではフォワードでスコアしたいと考えていたので、スコアチャンスには、PGを狙うべきケースでもこの先のゲームを考えてフォワードでチャレンジする選択をした。今後の修正課題である。
ディフェンスに関しては、15人全員が同じ意識になっていない。何人かの油断がひずみをつくってしまっていた」
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