リコーブラックラムズ 27-21 NECグリーンロケッツ
【week3/2009年9月19日(土) at東京・秩父宮ラグビー場】
「勝ちたい気持ちの強い方が勝つ」 ラグビー界で時折聞く言葉である。
昨季トップリーグ5位もクボタ、東芝府中と連敗し、本調子の出ないNECに挑むのは、トップリーグ昇格後、同じ昇格組のホンダを撃破し勢いにのるリコー。
両者は昨年の日本選手権2回戦で激突し、リコーが一点差で勝利を収めた試合の通り、順位差では割り切れないカードである。
最初のキックオフでいきなり逆サイドに蹴り、敵陣22mに切り込んだリコー。ゴール正面でNECのノットロールアウェイを誘い、SO河野がなんなくPGを決めて開始1分で先制。NECもリコー陣内に攻め込む。この試合前半キレの良かったSO安藤のキックパスがゴール前で決まるが辛くもタッチへ。その後はしばらく膠着状態が続くが、リコーペースで試合が続く。
12分。自陣深くに蹴り込まれたボールをリコーFBラーカムが処理。一人かわしたものの、WTB小吹へのパスが乱れたのをNEC WTBシュウペリ・ロコツイがインターセプトしてトライ。(G失敗)5-3と逆転に成功。
さらに18分 ハーフウェイ近くでペナルティを得て、NEC SO安藤が50m近い距離のPGを成功させる。(8-3)その後も大小のキックを織り交ぜた効果的な攻撃で、リコー陣で試合を進めるが、得点には結びつかず。
31分 河野が縦に突進で切り開き、得たNECゴール前のリコーボールスクラム。
いわゆるハチキューのサインと見せかけたダミーからNO.8ロッキー・ハビリが単独突破。ゴールポスト真下にトライ。Gも成功し、8-10と逆転に成功する。
さらに34分、リコーのセンタースクラムから右に振りできたラックから逆目に展開。FBラーカム→SO河野と回りラインの裏へ走りぬけたところで、外で待っていたWTB小松にパス。ポスト左にトライを決めて点差を広げる。(8-17)
前半終了を告げるホーンの直後、ラーカムがレイトチャージ(シンビン)。右端の厳しい角度であったが、SO安藤がきっちりと決め、11-17のリコーのリードで前半を終える。
後半立ち上がり間もなく、それまでも幾度となく良いランを見せていたリコーSO河野がふとした隙をついて今度はキック。NEC陣10mの遠い距離から技ありのドロップゴールを決め、11-20と点差を広げる。一方NEC、大事なところでパスミス、ハンドリングエラーなどが頻出。
さらに13分 NEC安藤のショートパントをチャージしたリコーCTB金澤がそのままキャッチ。約30mをそのまま走りきり、トライ。G成功(11-27)
このままでは終われないNECは23分 リコー陣ゴール前ラインアウトからのモールで交替で入ったNECニリ・ラトゥがトライ。(16-27)さらに32分 リプレイを見るかのように全く同じ位置でペナルティを得て、ラインアウト。NECサポーターの声援も一際盛り上がり、モールを押し込んでトライ。先ほどよりはポストに近い位置だったが、ゴールは外れてしまう。(21-27)
ラーカムがスピアータックルでこの試合二度目の退場。残り5分でまたもや同じところでラインアウト。今回はモールにこだわらず展開し、ゴールに迫るNECだが痛恨のオーバーザトップ。結局、NECは6点差を縮めきれずノーサイドを迎えた。
ノーサイドとともにグラウンドに飛び出してくるリザーブ選手達と抱き合い、優勝したかのようなガッツポーズを見せるリコー。「勝ちたい気持ちの強い方が勝つ」という原則を見た試合であった。
マンオブザマッチにはラン・パス・キックを見事に使い分け、攻撃を組み立てたSO河野が選ばれた。
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岡村ヘッドコーチ(右)、熊谷キャプテン
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◎NECグリーンロケッツ
○岡村要ヘッドコーチ
「本当に勝たなければならないと分かっていて臨んだゲームでしたが、前半、向こうのアグレッシブさを受けてしまい、後半、それをしっかり修正しようとしたのですが、前半の流れを変えられませんでした。あれだけ、ミスやペナルティをしたら勝てません。これまでの失敗を繰り返してしまったことが残念です」
──後半の修正点は?
「コンタクトエリア、ブレイクダウンの局面で、こちらの攻撃がスローボールになったり、ディフェンスでは簡単に相手にブローされたりしました。後半は、コンタクトエリアでのアグレッシブさを修正しようとしたのですが」
──安藤選手は?
「前半の途中で股関節を傷めていましたが、フルバックの松尾も前半に腰を打っていて、交代できず、個人で乗り切ってくれると信じていました。今日のパフォーマンスは点数的に後手に回ったので、栄次が駆け引きで勝負しなければいけない場面でできなかったと思います」
──1対1のミスをなくすには?
「日ごろの練習でアグレッシブに、センターの寄りの速さをやっていくしかないと思います。今日は、詰まった時にパスを選んだNECと、前へ出ることを選んだリコーさんの違いを感じました。後ろを選ぶとブローされてしまいます。修正していきます」
○熊谷皇紀キャプテン
「相手の速い仕掛けに受けてしまいました。タックルや局面で勝てなかったことが敗因です」
──後半は?
「やっていて、前半よりブレイクダウンは粘っていましたが、攻撃が途切れてしまったことが課題です。セットピースに関しては、プレッシャーは感じませんでした。勝ちきれないというか、致命的な点差ではなかったので気持ちは切れませんでしたし、モールトライも獲れていたので、あそこの時点まではやれると感じていたのですが」
──最後のボール出しの場面は?
「崩されて2回止まったので、ユーズイットがかかったのですが、本来、もう一度FWでアタックしてBKに出したいところですが、大きなプレッシャーをかけられたまま出してしまいました。BKからもコールがかかっていましたが、ミスでした」
──ミスについて?
「ミスの仕方が、簡単にポロッと気が抜けたように出ています。練習でやっているのに出るのは体力的な問題でなく、精神的なものと思います。厳しさが足りない」
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ローデン ヘッドコーチ(右)、池田キャプテン
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◎リコーブラックラムズ
○トッド・ローデン ヘッドコーチ
「ゲームは予想したとおりタフでタイトでした。NECさんも必死で勝ちに来ると思っていました。リコーとしては40分、14人で戦って、がんばったと思うし、良い経験になりました」
──勝因は?
「部分的にはうちのほうがプレッシャーをかけていました。シンビンなどでディフェンシブな試合になってしまいましたが、そこでディフェンスできたのが良かったと思います」
──以前指導された明治大学と比べて?
「明治も文化を大切にするチームで、そのチームで学び、幸運でした。このチームはぜんぜん違うが、大学のチームのように仲がよいところがあります。また、コーチしやすいとも言えます。練習に対する姿勢が良すぎて、もう止してと言うこともあります(笑)。2019年、かかって来なさいという気持ちです(笑)」
──パニックにならないのは?
「オフシーズンに富士山にウェイトを持たせて登らせるとか、プレッシャーがかかるようにチャレンジしています。いろいろな役割も分担させるなど、そういうチャレンジを重ねています。そして、とてもとても冷静なキャプテンがいますから(笑)。経験が豊富で、それを生かしてくれています」
──今日の試合の満足度は?
「戦術的には40%、アティテュード(姿勢)の面では90%満足しています」
○池田渉キャプテン
「プレッシャーのある試合で、シンビンの時間帯もしっかりマネジメントして戦っていこうとしたことがよかったと思います。ただ、連続して失点したり、プレッシャーをかけることはまだまだだったりするので、直していきます」
──どのようにマネジメントしたのか?
「全員がパニックにならず、状況に応じて戦いました。例えば、フルバックがいないときは河野を下げてロッキーをスタンドの位置に下げました。パニックにならないのは、いつも練習でヘッドコーチに追い込まれているからです(笑)」
──ハイパントへの集まりがよいが?
「単純にキックしてチェイスするのでなく、どのようにコミュニケーションをとっていくことが必要かという練習をやっています」
──前半、カウンターラックからトライが生まれたが?
「試合の中で、FWはいつもカウンターラックを狙っています。あれは良い時間帯に出てくれたと思います。あれで乗れたというわけではないが、全体を通してFWが前に出てくれると良いゲームをつくれますね」 |