出演は、東芝ブレイブルーパス 和田賢一 監督代行、三洋電機ワイルドナイツ 飯島均 監督、サントリーサンゴリアス 清宮克幸 監督、神戸製鋼コベルコスティーラーズ 平尾誠二 GM兼総監督。司会は村上晃一氏です。
マイクロソフトカップは、トップリーグの上位4チームが、真のチャンピオンを決するべく戦うプレーオフ。セミファイナル(準決勝)が2月1日(日)、東京の秩父宮ラグビー場と大阪の近鉄花園ラグビー場で、決戦のファイナル(決勝)が2月8日(日)、東京・秩父宮ラグビー場で開催されます。
なお、マイクロソフトカップの組合せについてはこちらを、チケットについてはこちらをご覧ください。またこの大会では、テレビマッチオフィシャルが初めて導入されます。ご注目ください。
リーグ終盤、東芝の勢い
村上:(1月18日の)最終戦の東芝はすごい勢いでしたね。(62-13で三洋電機ワイルドナイツに圧勝。リーグ1位通過を決めた)
和田:(1月5日、部員の不祥事が明らかになったことを受けて)ファンの皆さんの期待に応えるには、グラウンドですべてを出すしかない、とチームがひとつになってくれた。
村上:なにかを変えたわけではないんですか。
和田:練習内容も変えてないですし‥‥気持ちひとつでこれだけ変わるのかなと、感じましたね。
村上:その東芝を勢いづけてしまった清宮さん。(12節、5-61で東芝ブレイブルーパスに大敗)
清宮:被害者です(笑)。もちろん勝つ気まんまんでいきましたよ。5人ばかりメンバーを替えてはいましたが。でも、替えたメンバーが活躍するというシナリオだったんです。それで勝てたなら、得るものはでかいなと。
村上:では、ショックでした?
清宮:いえいえ。あれだけ東芝がいいラグビーをしたんだから、しょうがないですよ。
飯島:強かったですね。非常に強かった。悔しくて1日眠れませんでした。
村上:首位を逆転される可能性は、考えられていたんですか。
飯島:そういうモチベーションがあるなあとは考えていました。それでコーチたちと、4トライをとれば勝点1で首位を守れるので、トライをとりにいこうなどと考えたんですが、やはり普通に、いままで通りやろうということにしました──東芝の勢いにやられてしまい、まだ、ちょっと悔しいですね!
村上:結局(セミファイナルで)サントリーと当たることについては。
飯島:どのチームも非常に強いんでね、平尾さんのところも最後ギリギリで勝たしていただきましたし。東芝とやる前には、三洋が強いといわれてましたが、それまでの実際の試合内容は、逆転勝ちだったりということが多かった。どのチームも強いですよ。ただサントリーさんは、ラグビー界でも有名な監督・選手がいるチームですので、対抗意識はすごくありますよ。
村上:清宮さんは、三洋と当たることについては。
清宮:まあ、なるんじゃないかと‥‥。11・12節の三洋は、ケガの選手が多く、一方の東芝は、あの勢いでしたからね。
村上:平尾さんは、対東芝のサントリーと三洋の大敗はどうご覧になりますか。
平尾:ぼくらはその前にサントリーに大敗していますから、なんともいえないですよ(笑)。でも、ひとつ間違えば、ゲームって転がりますからね、上位3チームの力は肉薄していると思いますよ。
「ここまでシーズン前に思い描いていたような戦いができた?」という質問に答えて、和田監督代行と飯島監督が○
和田:開幕戦をトヨタさんとやらしていただいたときに、瀬川監督がかかげるラグビーで快勝することができた。途中、神戸製鋼さんに負けたり、納得できないところがありながらも、今年は、やろうとしたことをみんなが出しきってくれました。
飯島:最後は東芝さんに負けましたが、全体としては非常に、あきらめない戦いができました。
村上:平尾さんは×ですが。
平尾:思うようなかたちでトライがとれなかった。とりこぼしといえるような試合もありましたし。ただここに来て、だいぶ追いついてきた感じはもっています。
清宮:前半は負けて折り返すとか、点をとれずに折り返すという試合が多かったですね。でも、神戸戦ですかね、うまくいったのは‥‥。
平尾:どうも相性が悪いですね。サントリーとうちは(笑)。
「トップリーグでは自分たちのチームがいちばん面白いラグビーをしている」という質問に答えて、和田監督代行と飯島監督が○
司会の村上さんが、会場のお客さんに拍手でうかがうと、リーグ順位の通り、東芝ブレイブルーパス、三洋電機ワイルドナイツ、サントリーサンゴリアス、神戸製鋼コベルコスティーラーズの順に拍手が多いという結果でした。神戸製鋼コベルコスティーラーズについては、関西が本拠地なので、その分は割り引かないといけませんが。この結果について東芝ブレイブルーパスの和田監督代行は「うれしいですね。自分たちがやろうとしていることに対して支持をいただいて、非常にうれしくて、ここで帰ってもいいくらいです(笑)」と話していました。
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2月1日、日曜日のセミファイナル(準決勝)、東京・秩父宮ラグビー場で対戦する東芝ブレイブルーパスの和田賢一 監督代行(左)と、神戸製鋼コベルコスティーラーズの平尾誠二 GM兼総監督
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「期待以上に働いてくれた選手がいる」という質問には全員が○
和田:全員が期待以上の働きをしてくれたと思っていますし、なかでもひとり挙げるとすれば、キャプテンの廣瀬ですね。シーズン序盤にけがをして、出遅れた感はあったが、新ルールにも対応し、トライをとるというフィニッシャーとしてだけでなく、ボールを出すために仕掛ける、といった働き。そしてリーダーとしてチームをまとめてくれています。
飯島:新人の(プロップの)川俣、そして(フッカーの)堀江などですね。4月・5月の練習の様子では、半年後に活躍する姿は想像できませんでしたね。
村上:ところで、けがの選手についてはどうですか。
飯島:トニー・ブラウンはもう練習を再開しています。試合ができるかどうかは、相談してみないと分かりませんが、最終節で東芝に大敗したことが、彼のモチベーションに火をつけたことは間違いないです。
清宮:うちはまず曽我部ですね。彼には素晴らしい機転がはたらくところがあって、それが欠点にもなるのですが。トップリーグで彼に声をかけたのはサントリーだけで、うちが誘わなかったら下部リーグでプレーをしていたかもしれない。そういう選手が堂々と10番をはれるようになってきているわけで。
村上:やはり彼なりに努力をしている?
清宮:まあ、している、んでしょう(笑)。そういうのを見せないタイプなので。ちょっとほめすぎですかね(笑)。さっき平尾さんにもいわれたんですよ。おまえ、ようガマンしてるなーって。
村上:平尾さんのところはどうですか。
平尾:うちは、かみ合わせがまだいまひとつですが、全員が伸びたと思っています。特にということで挙げれば、トップリーグを初めて経験した、プロップの山下でしょうか。あとは(ウイングの)陣川。春先はどうかと思っていたのですが、よく活躍してくれました。
村上:(神戸のスタンドオフの)菊池選手は、サントリーフーズから移ったんですよね。
清宮:あいつ、神戸に移ることが決まった後に、ぼくにいってきたんですよ。前に相談しろよって怒りましたけど。ちょっと近すぎて、相談しにくかったそうですが。
村上:怖かったんでしょ。
清宮:ちがいますよ(笑)。母体が同じサントリーなんで。
「予想以上に強かったチームがある」という質問には‥‥
村上:これは飯島さんだけが×でしたけど。
飯島:みんな強いと思っていましたので、予想以上ということはないという解釈です。
清宮:へんな意味じゃなくて、14チーム中、ひとつだけ違うラグビーをするところがあるんですよ。サニックスですね。監督の藤井ともよく話をしますけど、試合前に分析して、セットプレーをきっちりおさえれば行けるだろうと予想していても、試合になると、あの手この手で工夫してきて、予想以上に強くて点をとられましたよね。
飯島:サニックスに対する評価は、ラグビーをやっている人間のなかでは高くて、トップリーグのなかでは、この名監督が居並ぶ前で失礼ですが、藤井がいちばん優秀な監督なんじゃないかと。選手の力を引き出すのがうまい。リスクにチャレンジして、実際、勝ってますしね。
平尾:ぼくもサニックスでした。負けたっていうこともあって。始めは勝てるかなと思っていくんですが、しぶといんですよね。チーム力の最大限を出してきているんじゃないでしょうか。今シーズンの負けは、勉強させてもらいましたね。
「マイクロソフトカップに向けて秘策を用意している」という質問には、平尾誠二 GM兼総監督と清宮監督が○
村上:清宮さんはどんな秘策を?
清宮:これから準備します。
村上:はは、ここでいったら秘策にならないですもんね。
清宮:チームは昨日から鹿児島で合宿に入っています。
村上:ところで夏合宿のときに、飯島さん、サントリーの練習を(北海道・網走まで)こっそり見に行ったんですって?
飯島:そうです。コーチ含めて3人でこっそり行きました(笑)。なかなか秘密裏にされていて、私もあるところから試合をやるんじゃないかときいてですね、キックオフの2、3分前に裏山から出ていきました。
清宮:空港で、(飯島さんは)見られてるんですよ(笑)。うちのスタッフも同じ飛行機に乗っていたんで。『飯島さん来てるよー』『ほんとー? 好きだねー』
飯島:そのとき、観光旅行だっていったんですけど。よく来るんですよって。
清宮:三脚まで立ててましたからね。それだけはやめましょうよ(笑)。
村上:東芝は(×の札でしたが)いつも通りですか。
和田:そうですね。ただトップリーグで反則数No.1になりましたので、秘策じゃないですけど、反則数は減らさないと。
村上:プレーオフは、イエロー累積3枚で、クリスチャン選手が出られませんね。ウイングはどうするんですか。
和田:‥‥それが秘策ですかね(笑)。
村上:まさか大野選手では。
和田:なんで分かるんですか(笑)。
清宮:あと、ベイツも(累積)2枚ですよね(笑)。
飯島:イエローカードについては最終節の東芝戦で堀江選手が初めてもらいまして。
村上:初めてのカードだったんですよね。
飯島:ロッカールームですごく落ち込んでましたね。負けたこと以上に、みんなにすまないと。
村上:今シーズン、三洋はそれまで誰もイエローカードを出されてないんですよね。東芝はベイツ選手が2枚ですか。
和田:ベイツ選手と、中居選手。
村上:(対戦する)平尾さんとしては期待‥‥。
平尾:そんなところで期待してもしゃあないですよ(笑)。
飯島:神戸製鋼さんは激しいチームですから、その危険性は十分にありうると思います。
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2月1日、日曜日のセミファイナル(準決勝)、大阪・近鉄花園ラグビー場で対戦するサントリーサンゴリアスの清宮克幸 監督(左)と、三洋電機ワイルドナイツの飯島均 監督
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外国人選手の枠について
村上:今シーズン変わったことといえば、外国人枠が3人になったり、ELV(試験的実施ルール)が導入されたり、ということがありましたが。
和田:今年入ってきてくれた外国人選手は、本当にフルに力を発揮してくれて、要所でキープレイヤーになってくれていますね。スタンドオフのヒルにしてもね。
村上:ヒル選手はいいですねー。
和田:そう、ぼくもびっくりしているんですよ。
村上:あれほどいいとは思わなかった?
和田:最初はセンターで使おうとしたんですけどね、頭も賢いですし、ゲームメイクがうまいし。
村上:あの選手は18歳からラグビーを始めたんですね。
和田:そうみたいですね。ラグビーマガジンで知りました(笑)。
村上:ちゃんとリサーチしてください(笑)。平尾さんはいかがですか。
平尾:どこで外国人選手を使うか、まだ決めかねているところがありますね。フォワードに3人なのか、バックスに1人割くのか。ただ質たるやチーム力にすごく影響しますね。
村上:清宮さんは。
清宮:もちろん、面白くなったと思いますね。日本人だけのチーム構成だと偏りが出てくるところを、外国人をうまく使っていくと、1年で急激にチーム力が変わる可能性を秘めてますね。来年ここ(マイクロソフトカップ出場のトップ4の位置)に違うチームがぽっと出てきてもぜんぜんおかしくない、リーグに緊張を与えてくれています。
飯島:うちの場合、けがで出ていませんが、トニー・ブラウン、ダニエル・ヒーナンですよね。試合はもちろん練習のときにも非常に態度がよく、若い選手にいい影響を与えてくれています。
村上:3人枠で戦い方に変化は?
飯島:私たちの場合、日本人選手も育ってきてて、バランスを考えると3人でない試合もいくつかあるんです。またコリニアシが帰化していますし、ユ(劉永男)もいるから、よけい(外国人選手が)いっぱいいるようにみえますが。
村上:ユ選手もいいロックですよね。アジア枠というのがありますから。
飯島:本来はフランカーなんですが、まだコミュニケーションがとりづらいところがありますので。でもスピードも闘争心もあり、ほとんど穴がないですね。
清宮:うちにも韓国の選手がいて(李光紋選手)、同じフランカーなんですが、本人いわく、自分のほうが上だっていうんですけどね。
飯島:韓国のラグビー協会では、李光紋選手のほうが上だっていう評価でした。私は韓国に行ってふたりとも試合をみて、ユさんのほうが上だなと思ったわけなんです。
お客さんからも質問
──相手チームから、ひとり引き抜くことができるとしたら?
和田:神戸さんのビデオをみるなかで、No.8のマパカイトロ選手。非常にいいですよね。
平尾:やっぱりヒル。いまスタンドオフ、インサイドバックスに外国人選手がいると、だいぶゲームの様相が変わってきますからね。
村上:スタンドオフにすえると、どう違ってくるんでしょうか。
平尾:日本のインサイドバックスのプレイヤーで、ゲームメイクを自分たちでできるかっていう、できる選手は少ないとぼくは思うんです。パスがうまい、キックがうまい選手は多いと思います。でも状況でゲームの流れをつかむ、もっというと変えてしまうとか、駆け引きの部分で、外国の選手は優れているなあと。
村上:清宮さんは、引き抜くとしたら‥‥。
清宮:今シーズンのコリニアシ。去年のシーズンまではまだ粗いところがあったんですが、今年はすごくいいです。
飯島:練習もよくしますし、頭もいい選手なんで、毎年伸びてます。
村上:飯島さんは。
飯島:平尾さんじゃないですが、デイビッド・ヒルが調子もいいし‥‥。
飯島:サントリーからじゃないの?
村上:ここまでみんなそうなんで(対戦チームから挙げてもらってますので)(笑)。
飯島:サントリーさんだとライアン・ニコラス選手がこわいですよね。あれだけの大きさでスピードもあり、分かっていても止めることが難しい選手ですね。
──ここがすごいという競技場は?
平尾:やはり三洋のホームグラウンド。正式にはなんていいましたっけ。
村上:太田市運動公園陸上競技場ですね。
平尾:ロッカールームがほんと狭いんですよ。バツベイが入らなかった(笑)。
清宮:去年、太田市運動公園陸上競技場で対戦したとき、薫田さん(東芝ブレイブルーパス前監督)にきいてたんですよ、清宮気をつけろよ、グラウンドが狭いから。だから前の日にスタジアムに行って、歩測したんです。狭かった‥‥。
飯島:いまの日本の地方の実態ですよね。神戸のホームズスタジアムとか、トヨタスタジアムはすごいですよね。
清宮:このふたつはスゴイね。
飯島:あそこで試合して、太田に帰ると‥‥(笑)。
清宮:太田の縦は、92か94メートルなんですよ。つまりトニー・ブラウンがいると(キックが飛ぶので)中盤のないラグビーになる。全部22(メートルライン)から22まで飛んじゃう。ピンチから(一気に)チャンス。
飯島:(今は)1~2メートル伸ばしたってきいてますけど。けれど、去年までは枯芝だったんです。我々はゴールデン・グラスと呼んでました。それが、太田のラグビーファンの皆さんの応援で、今年はゴールデン・グラスからグリーン・グラスになったんです。
トークバトルの場では、客席へのファンサービスのためか、太田市運動公園陸上競技場がずいぶんと"イジられて"いましたが、スタジアムがコンパクトであるということは、それだけファンと選手の距離が近いということでもあり、物理的な近さは心理的な近さにもつながることがあります。実際、三洋電機ワイルドナイツの試合の後は他競技場以上に、選手とファンが近く、グラウンド上で選手がていねいにサインをする光景は、太田市運動公園陸上競技場ならではともいわれています。
最後に改めて、各監督からコメント
和田:初めてのトークイベントということで参加させていただいたのですが、すごくいい貴重な時間をいただけました。皆さんのラグビーに対する熱い気持ちが伝わってきました。私たちはグラウンドで、また観に来たいと思われるようなゲームをして、皆さんの期待に応えたい。2月1日から始まるマイクロソフトカップ、応援をよろしくお願いします。
平尾:この企画は、観るより出るほうが面白いですね(笑)。また来たいなと思いました。出られるようにがんばりたい。マイクロソフトカップに出ること、ましてや1試合目がトップの東芝さんが相手ということで、光栄に思います。しっかりしたゲームをしたいと思います。ありがとうございました。
清宮:サントリーはそうやって勝ったか! と皆さんに観て楽しんでいただけるような試合をして、勝って東京に戻ってきたいと思います。はい、がんばります。
飯島:最終節で皆さんの期待を裏切るような試合をしてしまいましたので、後世に語り継がれるような試合をして、ぜひ優勝したいと思っています。よろしくお願いします。