2009.01.20 [TUE] 協会リリース Twitter Facebook Google+ LINE トップチャレンジ 第2節 マッチリポート リコーブラックラムズ 81-0 マツダブルーズーマーズ (2009年1月17日 at東京・秩父宮ラグビー場) リコーブラックラムズのローデンヘッドコーチ(右)、伊藤主将 マツダブルーズーマーズの伴田監督(右)、前田主将 結果から言うと、リコーが完勝し2年ぶりのトップリーグ昇格を決めたこの試合であるが、前半開始10分はほぼ9割方リコー陣内でマツダが有利に試合を進めていた。しかし、ノックオンやスローフォワードなど小さなミスが相次いでなかなか波に乗れない。 均衡を破ったのは、やはりこの人、オーストラリア代表キャップ102を持つスティーブン・ラーカムのキックからだった。今シーズン本職のSOで先発したのはわずか1試合で、FBとしての出場も板についてきた。元々ワラビーズでも最初のキャップはFBだった彼の使い方について、トッド・ローデンHCは「ELVを考えた場合、SOだとどうしてもモール・ラックに巻き込まれる可能性が大きい。FBだとラーカムのキック力や状況判断を充分に活かせる」。 11分ラーカムの(おそらく)タッチを狙ったキックが相手陣の22mライン手前のタッチライン際に落ち、そのままタッチに出るかと思われたが、内側に跳ね返りマツダ左WTB好本がハンドリングミス。そのボールをリコーSO河野が拾いそのままトライ。リコーのワンサイドゲームはここから始まった。 リコーは前半風下であるにも関わらず、キックを有効に使う戦術だった。そして相手陣に入り込むとすかざずBKに回す。SO河野がラックに巻き込まれるとFBラーカムがSOの位置に入る。そうすると、BKラインがよく動くという展開だった。 17分には鮮やかなそのBKのライン攻撃で敵陣ゴール前まで迫り、スクラムからサイドを突いてラックになりボールを拾いあげたPR長江のトライ。 21分には、FL伊藤主将のトライ。伊藤主将は「ゲームの入りは押されていたが、焦りはなかった」というように、このトライで自身も落ち着いたのかもしれない。 マツダはブレークダウンで負けていたので、どうしても人数をかけ過ぎ、ラインの人数が足らなくなっていた。 28分リコーはラインアウトからBKに回し、ラックの後右に展開。ライン参加したラーカムに渡ったと思った瞬間タップパスで内側をフォローしていたCTBに返し、もう一度大きく外に展開。最後は右WTB・7人制日本代表の小吹がゴールラインを駆け抜けた。 このあと前半は32分にSO河野が巧みなステップでゴール下にトライ、35分にもFW・BK一体となった攻撃で最後はまたも伊藤主将がトライを奪った。リコーが36-0として、前半を折り返した。 後半リコーは、一転してキックを使わず大きくボールを動かしグラウンドをフル使うに戦術に変えてきた。またしても、ラーカムがパスにランに大活躍となった。 43分ラックから出たボールを右オープンに展開するかと思いきや、ラックの横に走りこんできた左WTB星野にラーカムが絶妙の返しパス。裏をかかれたマツダは、なす術もなくトライを許した。 48分にもラーカムの細かいステップと決定的なラストパスで、HO滝澤のトライを引き寄せた。滝澤は直後の55分にも、BKでの大きな展開から何人もステップで抜き去ったCTB金澤のパスを受けトライ。 59分にはゴール前右中間でPKを得たリコーがスクラムを選択、BKに展開するとCTB小松が抜けてトライ。61分にもWTB星野が、相手ディフェンダーにいったん捕まりながらもそれを振りほどきタッチライン際を走り切りトライをあげた。 このようにリコーBK陣が1対1では抜群の強さを発揮して縦横無尽に走りトライを重ねていった。 しかし、BKだけではないことを73分にFWが証明した。トッドHCが今シーズン標榜するリコーの「トータルラグビー」が姿を現す。ゴール前の5mのスクラムから、プッシュオーバートライ(スクラムトライ)を成し遂げた。同HCは、「BKの攻撃ばかり目立ったけれども、このトライが一番嬉しかった。苦しい練習の成果で、誇りに思う」と表現した。伊藤主将も、「8人で取った特別なもの」。 そして最後の仕上げはどうしても、この日大活躍のラーカムになってしまった。80分ラーカムが柔らかい走りとしなやかなパスの繰り返しでタッチライン際を走り切り最後の13個目のトライを取った。81-0とリコーの一方的な展開で終始したゲームとなった。 試合後マツダ伴田監督は、「昨年のトップチャレンジでの反省から、今年はディフェンスに取り組んだ。しかしリコーの速い展開についていけなかった。人数で対応しきれなかった」とした。前田主将も、「1年間ディフェンスをしっかりやってきたのに、前半20分までもった組織ディフェンスが崩れてしまった」。 リコーのトッドHCは、「ようやく今日で頂上に登りきった。目標にしていたトップリーグへの昇格というモチベーションがあった。会社全体で、頑張ってきた甲斐があった」。伊藤主将は、「自分たちを貫けた。完封は自信になる。1年前にこの同じ秩父宮で降格した。今日はなんだか不思議な気分。やるべきことをやって、TLに戻ったという気持ちです。何が一番変わったかといえば、それはハートです」。 来シーズンは、一昨年までとは一味違うリコーブラックラムズがトップリーグでひと暴れしそうな予感のできる試合だった。 NTTコミュニケーションズ 124-0 三菱重工長崎 (2009年1月17日 at東京・秩父宮ラグビー場) NTTコミュニケーションズの山本監督(右)、加藤主将 トップリーグ11位との入替戦出場を賭けたトップチャレンジ2では、NTTコミュニケーションズ(トップイースト11 2位)が、来征してきた三菱重工長崎(トップキュウシュウ2位)をまったく寄せ付けなかった。NTTは来週近鉄花園ラグビー場にて行われる第3節で、同じく大差で三菱を破っている豊田自動織機とトップチャレンジ総合4位の座を争う。 トップイースト11の順位決定戦では劇的な逆転勝ちでトップチャレンジ進出を決めたNTT。この試合では開始から次々にトライを重ねていった。トップイースト11屈指のSOであるNTT君島は、その距離の出る正確なキックを多用することもなくゲームを組み立て、WTB友井川、河津やCTBレネヴェらを自在に走らせた。終始ボールを支配したFWがラックサイドを突破して大きくゲインする場面も多く、相手プレッシャーの少ない状況がより大胆なアタックを後押しし、大量得点に繋がった。 三菱重工長崎は、森岡公隆監督(同志社OB)を始めかつて日本代表へも選手を送り込んだ九州の名門チーム。しかし現在トップリーグで奮闘している3チームと九州では4番目のチームである三菱との差は大きく、トップリーグからの移籍選手、前後半で4人が入替った外国人選手などを抱えるこの日の相手NTTとの戦力差が露わとなってしまった。とは言え三菱は、果敢にタックルへ飛び込み、最後までトライを狙い、秩父宮での試合を存分に楽しんだように見えた。(米田)