6節 マッチ&会見リポート(NEC 34-20 ヤマハ発動機)

マッチリポート
NECグリーンロケッツ 34-20 ヤマハ発動機ジュビロ
(week6/2008年10月26日 at 千葉・柏の葉公園総合競技場)

朝から降り出した冷たい雨もキックオフ数時間前に止み、曇天の空の下、トップリーグ第6節NECグリーンロケッツ対YAMAHA発動機ジュビロの試合はキックオフの時を迎えた。
NECグリーンロケッツはここまで3勝2敗とやや苦しい戦いが続いている。持ち前のDF力は復活しつつあるが、決定力の不足が響き、苦しい展開となっている。今季の目標である「4強入り」(マイクロソフトカップ出場)、日本選手権出場権の確保に向けて負けられない試合がこれから続いていく。課題の得点力アップに向けて、どのようにチームを立て直していくのかが注目された。
一方のYAMAHA発動機ジュビロはNECグリーンロケッツと変わらぬ3勝2敗であるが、前節、サントリーサンゴリアスを後半の逆転で下し、波に乗っている。FWとBKが一体となったスピードある攻守の切り替えに磨きがかかり、着実にチームが進化しつつある。互いの「意地」と「生き残り」をかけた文字通りの「決戦」はスタートした。

試合は前半からお互いの気迫がぶつかり合い、激しく得点が動く展開となった。まず先制したのはSH安とSOヤコという攻撃的なHB団をスタートメンバーとしたNECであった。風上を利したヤコの効果的なキックで地域を獲得し、7分にペナルティゴールをFB松尾が成功、さらに22分には約45mロングDGをSOヤコが成功させ、流れをつかんだ。24分にミスからYAMAHAのCTBマッコイドに1トライを奪われるが、29分に見事なオープン攻撃からWTB首藤が左隅にトライ、34分にはキックチャージからFLマーシュが中央にトライを奪い、大きくリードした。試合は一方的な展開になると思われたが、後がないYAMAHAもこの苦境から立ち直り、必死の反撃を見せる。FWとBKが一体となった攻撃で相手陣に攻め込み、39分にPGを成功させ、後半の反撃に望みを抱かせた。

後半も立ち上がりからNECが流れをつかみ、ゴール前に攻め込む。ところが、ヤマハの素晴らしいDFはゴールラインを割らせない。そして、6分自陣ゴール前のターンオーバーから見事なカウンター攻撃を見せ、連続攻撃からSO太田尾がゴール直下にトライを奪い、ゴールも成功させ、5点差に迫る。そして12分にはCTB松下が見事なカットインで抜け出しWTB中園が左隅にトライ、同点に追いついた。その後、試合は膠着し、お互いに流れかけたペースを奪い合う一進一退の攻防が続いた。
この緊迫した試合の流れを決めたのは、やはりミスであった。20分にNECはYAMAHAのBKのハンドリングエラーからゴール前のラインアウトのチャンスを得る。渾身のジャンプからモールを押し込み、最後はLO佐藤平がトライ、難しいゴールもFB松尾が成功させ、リードを奪うと、37分スクラムからFB松尾が突破し、WTB窪田がトライし、勝負を決めた。その後、4トライの勝ち点1の奪取を狙いYAMAHAも死力を尽くして攻撃するが、NECの好DFの前にトライを奪えず、ノーサイドの笛が鳴った。
トップリーグ「4強入り」に燃える両チームの、前半からアグレッシブにボールを積極的に動かすラグビーは観ている者にとって楽しく、ラグビーの面白さが凝縮した80分間であった。またファイト溢れるブレイクダウンの攻防は大変に見応えのあるものであった。両チームの健闘に敬意を表したい。(塚越康利)


NEC 34-20 ヤマハ発動機   NEC 34-20 ヤマハ発動機   NEC 34-20 ヤマハ発動機
会見リポート
NECグリーンロケッツ
◎NECグリーンロケッツ
○細谷直監督
「同じ勝敗同士の決戦であり、お互いにとって大切なゲームであった。もう後がないという強い気持ちでゲームに臨んだ。ワイドのオープンにボールを展開するというアグレッシブなラグビーを展開できたのがうれしい。特に前半の2つ目のトライはNECの目指すベストトライであった。あのようなトライを奪うことが我々の課題であったのでYAMAHAさんを相手にあのトライを奪取できたのは大きな収穫であった。次のトヨタ戦は昨年負けている相手なので、この休止期間にしっかりと修正点を見つけ、そして修正して臨みたい」

──本日のスターティングメンバーSH安・SOヤコのHB団の意図とその評価は?
「今までのNECのSHはゲームごとに変わり、安定していなかった。SH安は、パス、ランニング、フィットネス、キック力ともに素晴らしいモノを持っているのだが、コミュニケーション能力に不安があり起用をためらっていた。SOヤコの起用は安藤の怪我もあり、後がないこの状況で思い切って起用した。ヤコの素早い動きに安のさばきをマッチさせることができ、満足している。今日のHB団の動きは満点である。DFの際にヤコをFBに起用したのは、彼のフィールディングを生かすためであり、DF面の不安からではない」

──SH安の交代はなぜか?
「『怪我』で、今病院に行っている」

──メンバーの固定化が見られなかった前半戦であるが、これからメンバーを固定化するのか?それとも相手によってメンバーを変えるのか?
「前者です。この2試合のチームの状態は良かった。今日のDFもよく、クボタ戦も良かった。メンバーは固まりつつある。後はケガの対応を考えるだけだ」

──今日のロビンスの交代は?
「試合前から状態は良くなかったので、彼のコールで交代した」

──安藤、ロビンスのケガの具合は?安のケガの具合は?
「安藤は大丈夫。ロビンスは休ませたい、ジャパンがあるので(笑)。安の様子はまだわからない」

──この休みの修正点は?
「ラインの浅さ。WTBが浅く、パススピードとランのスピードのアジャストをしていきたい。今日のラグビー、グラウンドをいっぱいに使ったラグビーを心がけたい」

○箕内拓郎ゲームキャプテン
「監督の言ったことがすべて。自分たちの目指すラグビーができた。5ポイントを獲得し、ヤマハさんを0ポイントに押さえたのは今後の順位争いには大きい」

──SH安とのコミュニケーションはどうだったのか?
「8割方問題ない。あとは瞬時のコミュニケーションだけだ。あとは試合で修正するだけだ。やっていて楽しかった」

──ブレイクダウンの攻防について感じることは?
「サントリーに勝ったヤマハと東芝に負けたNEC。その勢いに負けぬように立ち上がりからアグレッシブに行った。YAMAHAのスクラムにプレッシャーをかけられたのは満足している」

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ヤマハ発動機ジュビロ
◎ヤマハ発動機ジュビロ
○堀川隆延監督
「敗因はブレイクダウンで圧倒されたこと。だが、ヤマハのやろうとしているラグビーはできつつある。次の東芝戦は修正してきたい」

──矢富のメンバー交代のタイミングはどうだったのか?予め、予定していたのか?
「ゲームの流れです。SHの判断ミスが目立ったので交代した。矢富が力を発揮するのはゲインラインをきったあと。ゲインラインをとれなかったのがすべてであり、仕掛けどころでゲインがとれれば、ヤマハのラグビーができたはず」

──大西の交代のタイミングとその評価は?
「長いプレー時間であるのでわからない。ビデオでチェックしたい」

──大西は残り10分しかプレーできない状態なのか?日本代表も辞退している。今後の起用法は?
「チーム内で競争をさせたい。ジャパンのメンバーであろうと関係ない」

──フル出場はきついのか?
「その通り。しかし、彼は気持ちが強いので‥‥」

──ブレイクダウンで負けたのはなぜか?チームの問題なのか?
選手個人の問題なのか?
「受けたのはDFの局面である。ラインスピードを上げられなかった。チーム全体で受けてしまった」

──蹴り合いのゲームに持ち込まない方法があったのでは?
「エリアで対策は練っていたのだが‥‥。後半追いついた後のイメージをチームに提示できなかったのは残念。ファーストフェイズでもキックを使うべきだった」

──キッキングゲームで負けていたように感じるが?
「その通り。ヤコのキックがすべて」

○山村亮キャプテン
「接点でくい込まれたのがすべて。前半エリアをとれなかったのが痛い。後半はヤマハのラグビーができた。あと1ケ月で修正したい」

──後半同点に追いついたあとはノースコアであるが、それでも満足しているか?
「後半の同点後はダメだった。敵陣でラグビーができなかった」

──敵陣で長く戦ったイメージがないが?
「その通り。NECは上手かった」

──ブレイクダウンの問題だが、先週はサントリーを圧倒し、今週はうまくいかなかったのは、YAMAHAの問題なのか?それともNECのブレイクダウンが強いのか?
「先週のサントリーより今日のNECのほうが強いのは確かだ。うちの問題ではない」

NEC 34-20 ヤマハ発動機   NEC 34-20 ヤマハ発動機

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