トップリーグ2015-2016 第5節 マッチサマリー(東芝 17-17 パナソニック)

東芝
ブレイブルーパス
東芝ブレイブルーパス
17 合計 17
10 前半 10
7 後半 7
2 勝点 2
17 総勝点 22
パナソニック
ワイルドナイツ
パナソニック ワイルドナイツ

東芝ブレイブルーパス 17-17 パナソニック ワイルドナイツ

トップリーグ2015-2016 第5節 グループA
2015年12月12日(土)14:00キックオフ/東京・秩父宮ラグビー場

ジャパンラグビー トップリーグ 2015-2016 リーグ戦も残り3節。
今年はW杯開催のため1リーグ戦での日程、各チームとも終盤に差し掛かりメンバー調整に苦労が見られるが、順位決定トーナメント『LIXIL CUP 2016』
へ向けて、両チームとも負けられない戦いが続く。

日本代表選手を主力とする両チームの対戦に、この日の秩父宮ラグビー場は、今季最多(トップリーグ歴代2位)となる20,138名の大観衆。パナソニック ワイルドナイツ SOベリック・バーンズのキックオフで前半がスタートした。

序盤から相手陣へ攻めていくパナソニック、セットプレーから日本代表SH田中史朗が素早いリズムでボールを展開していく。

前半4分、パナソニックは自陣右ゴール前10m付近のターンオーバーからのカウンターでWTB北川智規が大きくゲイン、ハーフライン付近から左に展開、CTB林泰基からのキックパスにWTB児玉健太郎がタイミングよく走り込みボールをキャッチ、相手ディフェンスをかわし、そのまま中央付近に廻り込んでトライ、バーンズのゴールも成功し0-7とする。

東芝も10分、相手陣10m中央付近で得たPKのチャンスをFBフランソワ・ステインがPGを決め3-7とする。26分には、相手陣右ゴール前で得たペナルティのチャンスから、タッチキックでラインアウトを選択、得意のモール戦に持ち込み左サイドへドライブ、最後はモールが崩れたところで、東芝ブレイブルーパス/冨岡鉄平監督が『国内最高レベルの選手』の1人と絶賛するFL山本絋史が右中間に押し込んでトライ、SH小川高廣のゴールも成功し10-7と逆転する。

その後は両チームともBKでのサインプレーでの展開やキックを使って相手陣へ攻め込んで行くが、双方の堅いディフェンスで得点が動かず。前半終了間際に、自陣ゴール前に攻め込まれた東芝がオーバーザトップの反則、ゴール正面のPKをバーンズが確実にPGを決め10-10の同点で前半を終える。

後半に入るとやや風も強まり、12月の肌寒い中でのゲームが進むが、両チームのプレーはますますヒートアップ、ブレイクダウンでの激しいボールの争奪戦が続き、20分過ぎまで一進一退の攻防が続く。得点が動いたのは後半21分、ハーフタイムで『前半はお互い疲れる内容だったので後半は相手が疲れたところをたたみ掛けたい』とのロビー・ディーンズ監督の狙い通り、パナソニックは相手ゴール前15m付近の左ラインアウトから、ゴール前までモールで一気にラッシュを仕掛けると、堪らず東芝がコラプシング(シンビン:トライを防ぐ故意の反則)でペナルティトライ、ゴールも成功し10-17と勝ち越す。

負けられない東芝も、後半30分過ぎから相手陣ゴール前へ攻め込み、日本代表主将のFLリーチマイケルやNo.8徳永祥尭のラックサイドを鋭角に走り込む連続攻撃、33分には日本代表LO大野均を投入し、相手へのプレッシャーを除々に掛けて行くが、パナソニックも必死のディフェンスでゲインラインを突破させない。

しかし37分、東芝は相手陣左ゴール前ラインアウトでボールを獲得、右サイドでショートパスを受けたFL山本が相手ディフェンスを押し込みゴールライン付近にグラウンディング、TMO判定の結果トライが認められ(ゴール成功)17-17同点とする。

試合終了間際の39分、パナソニックは連続攻撃を仕掛け、相手陣30m中央付近のラックから出たボールをバーンズがDGを狙うも、ボールはゴール左ポストに弾かれ失敗。試合終了のホーンの鳴ったラスト1プレイ、ステインがキックでボールをタッチに出してノーサイド。
尚、マン・オブ・ザ・マッチには、2トライの活躍をみせた東芝ブレイブルーパスFL山本絋史選手が選ばれた。

試合終了後に行なわれた観客席への選手挨拶では、パナソニック・東芝双方のファンのお客様が対戦相手選手への健闘を称え合う光景が非常に感動的であった。
まさに、本日秩父宮ラグビー場にお越し頂いた20,000名を超すお客様が、”W杯後の感動のつづきをトップリーグで” 味わうことが証明できた程の内容の素晴らしいゲームであった。
試合終了後の記者会見、パナソニック ワイルドナイツ/ロビー・ディーンズ監督からも、『日本のラグビーのレベルがワールドクラスにまで成長してきた』と言わしめた。

引き分けた両チームには勝点2ずつが与えられ、パナソニックは総勝点を22とし首位、東芝は総勝点を17とし3位をキープした。この結果、グループAは首位のパナソニックから5位NTTコムまで総勝点差の6の中に5チームがひしめき合う混戦模様、ますますトップリーグから目が離せない。
(橋本 光一)


● 記者会見ダイジェスト ●

東芝ブレイブルーパス

東芝ブレイブルーパス
富岡監督(右)、梶川ゲームキャプテン

冨岡鉄平監督

「そうですね、日本のラグビーのスタンダードを示した試合でした。ワールドカップ後、多くの代表中心選手がシーズン中、ラグビーを認識していただくチャンスととらえて、プレーしてくれています。僕らのラグビーの内容がダメなら、ラグビーは衰退していきます。そうしたことを考えて勝ちに行って、引き分け。選手たちに最大級の賛辞を送りたいと思います。よく、あの苦しい時間帯に我慢してくれました。フランソワも待たされながら集中してゴールを決めてくれました。近鉄、サントリー戦が残っていますので、日本ラグビーの魅力を伝えられる中心になってやっていきたいと思います」

──どのような準備を?

「アタックでは継続しないといけないので、その準備をしてきました。どこのエリアからもマネジメントして臨むということです。ディフェンスでは、相手の継続性とスピードを断つことを目指してきました。NTTコムさんに負けたのは良い経験になりました。自分たちの形を生かして、対戦相手の形を出させないことです。もちろん、パナソニックさんも同じことを考えているので、今日はうまくいかなかったことが多かったです」

──リーグ戦で初の2万人超えだが?

「選手時代から、バックスタンドの角が空いている時は、『もう一つ、注目されていないな』(笑)と思っていました。先週のヤマハ戦を超えられないかもと案じていました」

──リーチ選手は?

「ワールドカップ、チーフスで成長しています。日本代表キャプテンのスタンダードを、フィジカルの状態が悪くても示してくれました。彼が日本代表の基本です。月曜日は正直、出せる状態ではありませんでした。今日も40分の約束で出したのですが、本人もやれると言ってきたので、80分出てもらいました」

──あと2試合は?

「接点が大事です。世界のラグビーを観てもポジション、ゾーンでどういうシェイプ、リンケージなのかしっかり理解して準備させたいです。どうやって相手のディフェンスを攻略するかです」

梶川喬介ゲームキャプテン

「個人的に、とてもタフな試合でした。この1週間、激しい練習をしてきて、それを出せたと思います。残りの試合、チーム力を上げて、スタンダードを上げていくのが近道だと感じました

──ディーンズ監督もインターナショナルレベルと言ったが?

「80分タフなゲームでした。チーム全体でサポートしたので、結果は引き分けですが、内容的には良いゲームだったと思います」

──ブレイクダウンは?

「まず、しっかりパナソニックさんのブレイクダウンにプレッシャーを掛けることができました。ターンオーバーもありましたし、パナソニックさんの速い二人目に対してコミットできましたが、セカンドランナーの競争で負けた部分もありました」

──リーグ戦で初の2万人超えだが?

「個人的には、お客様の多い中で試合をしたことはなかったので、ラインアウトのコールが難しく感じました」

──ラスト、同点の場面では?

「規律をしっかり守ろうと言って、同じ方向を向くことができて、ターンオーバーできたと思います」


パナソニック ワイルドナイツ

パナソニック ワイルドナイツ
ディーンズ監督(右)、堀江キャプテン

ロビー・ディーンズ監督

「今日はありがとうございました。(と、日本語で。以下英語で)今日のゲームには満足しています。チームの色を出そうという目標でしたが、達成でき、両チームとも本当に素晴らしい試合をお見せすることができました。精度の高い攻防をし続けて同点で終わったことには、お互い満足できるものがあったと思います。リーグ戦の目的は、まず、プレーオフ出場を決めることですが、しっかり収穫もあったゲームでした」

──ハーフタイムの指示は?

「まず、前半はお互いに速い展開で、非常に疲れる形だったので、できれば後半はボールキープして、相手が疲れたところで得点するイメージで、簡単なペナルティを犯さず、相手が自陣に入って来れないようなゲーム運びをしようと指示しました。しかし、後半は拮抗した時間があって、これがラグビーゲームの本質だと思います。小さな部分で勝敗が分かれますから、お互いに公平な結果だったのではないでしょうか」

──このくらいのゲームがこの時期にやれるのは想定内か?

「もちろん、東芝さんも最終節を待つことなく、早くプレーオフ進出を決めたいと思っています。これくらい激しいゲームになるとは思っていました。我々もアタックの強みを前半に出せました。このレベルだと、相手の強みをいかに消すかという試合になります。日本のラグビーがインターナショナルレベルになってきた証左だと思います」

──どこがインターナショナルレベルなのか?

「コンタクトエリアの攻防です。日本のラグビーは元々スピードがありますが、今日はコンタクトエリアで激しく戦い、ボールキャリアをサポートして、スペースにボールを運んでいたと思います。ディフェンスも高いレベルで、目の肥えたファンには楽しんでいただけたと思います。本当に美しいプレーがありましたから」

堀江翔太キャプテン

「お疲れ様です。最後の最後までどうなるか分からない試合で、同点で終わるというのも勝負の世界でした。チームとして崩れたわけでもなく、個人のところでどんどん崩されたので、インディビジュアルでどう変われるかが大事です。ミスをなくそうとするより、小さな個人の強さを意識していきたいと思います」

──スタンドはほぼ満員だったが?

「もうちょっと、最後は攻めたい気持ちもあったのですが、この環境で競った試合ができたのは、選手にとって成長する良い機会だったと思います。やはり、満員のお客様の前で下手なゲームはできないと感じました。今日は見ている方にも楽しんでいただける試合ができて良かったと思います

──アンストラクチャーな場面では?

「ゲインを越えてはいますが、次の何かがうまくいっていなかったと思います。戦術、戦略より、個人の判断で、立ち位置とか、ボールの位置とかをやっていかなくてはならないと思います。アタックのブレイクダウンでは、少し抜けてから、ポールキャリアが半身になるとか判断できるところはあると思います。もう少し意識していきたいと思います」

──ブレイクダウンの攻防は面白かったが?

「こちらは痛いので(苦笑)、あんまり入りたくないのですが、向こうもコンタクトをしっかり練習してきたなと感じました」

──最後の場面では?

「結構、我慢してやっていました。最後もあそこまで持って行かれたのが悪かったと思います。ただ、全部悪かったわけでなく、代わった選手も安定してプレーしていたと思います」









マン・オブ・ザ・マッチは東芝ブレイブルーパス7番、山本紘史選手


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