日本代表分析スタッフが紐解く「ラグビー因数分解」(第1回)
本コラムでは、エディー・ジョーンズ率いる日本代表チームを裏で支える分析スタッフ、中島正太氏がトップリーグ公式アプリを用いて、様々な数字からラグビーの魅力を奥深く伝えていきます。 ● 1月5日、府中ダービーで2014年の幕を開けるのは東芝ブレイブルーパス対サントリーサンゴリアス戦。 1.開始30分が王者サントリーを倒すために最も重要な時間。 1.開始30分が王者サントリーを倒すために最も重要な時間。東芝が王者を倒すためには、開始30分の間になるべく多くの得点を奪い、サントリーからリードしておく必要がある。 (1)今シーズン、サントリーが敗れている2試合共に、開始30分の間に14失点以上(2トライ2ゴール)を許している。 (2)東芝が奪う全得点中57%が前半であり、前半得点をリードした場合の勝率は88%である。 サントリー時間帯別得失点比較グラフの0-30分間の得失点の差を見るとわかるようにこの時間帯の得失点差が少ない。得点もするが、失点も多いといういわゆるゲームをコントロールができていない時間帯である。 しかし前半の終盤である30-40分に近づくにつれ、サントリーのギアが入りアタッキングラグビーの強みを最大限発揮し得点が大きく増加していることがわかる。 では、東芝は開始30分までにどのようにして得点を奪ったらよいのか。 2.パスが少ないラグビーこそ、東芝の強み。今シーズン東芝は1試合平均114回のパスを投げている。この数字はトップリーグランキングの13番目に位置し、パスが比較的少ないチームであることがわかる。これは東芝ラグビーの特徴のひとつで、代名詞である”ドライビングモール”、そして強力なランナーが揃うバックロー・CTB陣に少ないパスでシンプルに繋ぐスタイルがこの数字に表れている。 ここで興味深い数字がある。 勝利した試合のパス数の方が明らかに少ないことがわかる。パス数が東芝のパフォーマンスに関連づいていることを示している。パス数が少なければ東芝のアタックの充実度を表し、逆にパス数が多ければ相手ディフェンスに苦戦し、本来の攻撃力を発揮できていないとわかるのである。 サントリーと過去4試合の対戦では1試合平均197回のパスプレイを選択している。ボールを長く保持し、支配を高めたいとするサントリーの狙いに反し、極力キックを使わずパススタイルで立ち向かおうという考えであろう。(東芝のキック数は1試合平均24本だが、過去のサントリー戦では14本に減少) その中、過去4試合のうち勝利した試合のパス回数は最少の145回であり、サントリーと対したときの平均値と比較してもかなり低い数値である。 相手がサントリーであっても東芝のスタイルを貫き、試合開始直後から東芝の強みを王者にぶつけることでゴールラインが見えてくるのである。 3.王者サントリーがアタッキングラグビーを遂行するためには。サントリーが注意すべき点は、タックルシチュエーションである。 一方の東芝はディフェンス時、成功率の高いタックル(リーグ3位のタックル成功率80%)に加え、2.6回に1度のタックルシチュエーションでアシストタックラーが相手ボールキャリアに絡んでいる。東芝は少人数でブレイクダウンを処理するサントリーに対し、アシストタックラーが立ってプレッシャーを加え、サントリーに3人4人と人数をかけさせたいと考えるはずである。サントリーがいかにしてブレイクダウンを制するのか。ブレイクダウンで数的有利をもたらし、どれだけの選手たちがアタッキングシェイプを作り攻撃に参加することができるかが、80分通しての見どころである。
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