サントリーサンゴリアス/パナソニック ワイルドナイツ/東芝ブレイブルーパス/NECグリーンロケッツ
8月31日、ジャパンラグビー トップリーグは記念すべき10周年の開幕を迎える。
当HPでは、新シーズンのスタートに先立って計14チームの戦力分析やプレシーズンマッチの動向などをもとにしたシーズンプレビューを、計3回にわたって掲載。
前編では、昨シーズン4年ぶり2度目のトップリーグ王者となったサントリーサンゴリアスをはじめ、昨季プレーオフに進んだ上位4チームの現況を紹介する。
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8月24日、東京・秩父宮ラグビー場に一堂に会した14チームの選手。今季、頂点に立つのは果たして‥‥
photo by Kenji Demura (RJP)
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サントリーサンゴリアス=昨季1位
新体制でハングリーに勝利を追求
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昨季、トップリーグと日本選手権の2冠を達成した王者は、新体制でタイトル防衛のシーズンに臨む。
日本代表ヘッドコーチに就任したエディー・ジョーンズ前監督の後を受けて新たに指揮を執るのは、大久保直弥監督。現役時代は日本代表として23キャップを誇るなど、仕事人FLとしてならし、一昨季、昨季とジョーンズ前監督のもとでFWコーチを務めた。
当然、ジョーンズ前監督がサントリーに根づかせた「アグレッシブ、アタッキングラグビー」を熟知。ただし、新指揮官自身は、今季のチームは昨季のチャンピオンとは全く別のチームという認識でいる。
「優勝カップも返還したし、新たなチームとしてチャレンジする」
7月、8月に行われたプレシーズンマッチでは、近鉄ライナーズ、NECグリーンロケッツ、東芝ブレイブルーパスに敗れるなど、開幕前に王者の調整ぶりに不安を囁く向きも少なくない。大久保新監督自身、チーム状態に危機感を感じていることを隠さない。「今年のサントリーはスーパー15のレッズと状況が似ている。昨シーズン、レッズはアタッキングラグビーでスーパー15を制し、豪州代表にも多くのプレーヤーが選ばれた。それが、今季はセミファイナルに残れなかった。サントリーもそうなる可能性はある」
PR小川真也、HO山岡俊、FB小田龍司が引退。米国代表主将のFLトッド・クレバー(→NTTコム)、SO曽我部佳憲(→ヤマハ発動機)が他チームに移籍する一方、新たに、HO鈴木亮太郎(明大=U20日本代表)、ティモシー・ボンド(帝京大=日本A代表)、新ポジションに挑戦するFL仲宗根健太(慶大=U20日本代表)、WTB/FB竹下祥平(法大=U20日本代表)といった大学ラグビーのスター選手が新加入。
多くが日本代表でもある日本人の主力の実力に不安はなく、さらに、この春、ジョーンズ監督率いる日本代表の指令塔として活躍したSO小野晃征がサニックスから移籍。「思っていたよりも早くチームにフィットしてくれた」(大久保監督)とすでにチーム内での信頼も勝ち取っている。
大久保監督が「世界トップレベルのゲームを読む力がある」と評価する、FLジョージ・スミス、SHフーリー・デュプレアの存在感も絶大だ。
戦力的には連覇を果たしても誰も驚かないものがあるだけに、ポイントは今季のチームフレーズ通り、「いかにひとりひとりがハングリーに勝ちにいけるか」(LO真壁伸弥主将)。
プレシーズンマッチでは、FW戦で後手に回るシーンも多かっただけに、開幕直前までFWにフォーカスした最終調整が続く。
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サニックスから移籍したSO小野はプレシーズン時点ですでにチームに完全にフィットしたプレーぶりを見せていた
photo by Kenji Demura (RJP)
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パナソニック ワイルドナイツ=昨季2位
驚きのSBW加入。ホラニ復帰のFWに手応え
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次々に海外からビッグネームが加わるようになったトップリーグにあっても、最大級の驚きをもって迎えられたのがNZ代表CTB/WTBソニー・ビル・ウィリアムズのパナソニック入りだろう。
元々は13人制ラグビーリーグのスター選手。極論すれば昨秋、地元NZで開催されたラグビーW杯出場のためにプレーの場を15人制に移し、すでにパナソニックでプレーした後はラグビーリーグに復帰することも発表されている。ヘビー級プロボクサーという一面も持つ楕円球界きってのスーパースターが、とりあえずの15人制での最後の働き場として選んだのが、ワイルドナイツということになる。
チーフスの一員として今季のスーパーラグビーのタイトルを手に入れた後、スティーブ・ハンセンNZ代表新監督に乞われるかたちでラグビー・チャンピオンシップの1、2戦でプレーした後、トップリーグ開幕直前に来日。
当然ながら、「来日して、コンディションを確認した後、チームとフィットするかを判断しながら」(中島則文監督)、いつ、どんなかたちでトップリーグでのデビューを果たすのか、決められることになる。
そんな超ビッグネーム獲得の一方で、HO堀江翔太、LOジャスティン・アイブス、SH田中史朗という主力抜きで開幕を迎えなければならない事情もある。この3人はNZ国内選手権ITMカップのオタゴ代表の一員としてプレー。同大会が10月末まで続くため、パナソニックの一員としてトップリーグで3人の勇姿が見られるのは11月のウィンドウ・マンス明けとなる見込みだ。
さらに、CTBジャック・フーリーが神戸製鋼コベルコスティーラーズに移籍、SO/CTB入江順和が引退など、昨季の顔ぶれとはかなり異なるメンバー構成で開幕を迎えるパナソニックだが、プレシーズンマッチでは若手の成長もあって好調をキープ。夏合宿の最終戦でヤマハ発動機に惜敗(8月5日、網走/31-35)した以外は、いずれもトップリーグチーム相手に7勝。
「何よりもFWの成長ぶりに手応えを感じている」と中島監督。昨季、ヒザの故障で1シーズンを棒に振ったNO8ホラニ龍コリニアシが完全復活している点も心強い。
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昨季、ヒザの故障でシーズンを棒に振ったNO8ホラニ副将は最高の状態で開幕に臨めそうだ
photo by Kenji Demura (RJP)
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東芝ブレイブルーパス=昨季3位
今季はキックマネージメントも重視
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8月18日に行われた恒例のプレシーズン府中ダービーでは、FW戦で王者サントリーを圧倒。
17-13というスコア以上に仕上がりの良さを感じさせた。
「(宿敵サントリーに)勝ちたいという選手の気持ちの部分が前面に出ていた」
開幕まで2週間を切った時点での王者に対する完勝ぶりを和田賢一監督はそう喜んだが、過去5回トップリーグを制してきた名門チームも過去2年間は日本選手権も含めて無冠。チーム全体に勝利への欲求がみなぎっていることに疑いの余地はないだろう。
LO大野均、CTB仙波智裕副将という日本代表でもある中心選手が故障のため開幕に間に合うか微妙な状況だが、先のサントリー戦、そして8月4日に網走で行われたトヨタ戦(47-28)などのプレシーズンマッチを見る限り、若手がしっかりとベテラン勢の穴を埋めていて、全くと言っていいほど不安は感じさせない。
LOでは梶川喬介、CTBでは渡邊太生という共に3年目の成長株がしっかりレギュラー穫りをアピール。さらに、ルーキーSO/CTB森田佳寿(帝京大=U20日本代表)も新人とは思えない落ち着いたプレーとユーティリティぶりで貴重な戦力となっている。
安定したセットプレー、そして激しいブレイクダウンをベースに立ってボールを前に運んでいく「スタンディングラグビー」が、今季も東芝ラグビーの基本であることに変わりはない。ただし、今季より重視されているのは、強引に攻めるだけではない「ゲームマネージメント」の部分。昨季はそれほど重視されていない印象だったキックに関しても、エリア取りはもちろん、状況によってはペナルティキックを狙うシーンもプレシーズンマッチでは見られた。
局地戦へのこだわりだけに終始しない、激しく、かつ今まで以上にスマートな部分も併せ持った東芝ラグビーが見られそうだ。
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SOもCTBもプレーできる貴重な戦力として、開幕からフル稼働しそうな新人・森田
photo by Kenji Demura (RJP)
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NECグリーンロケッツ
プレシーズンではサントリーに連勝
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春、夏共に王者サントリーに勝利(6月22日=40-35/8月4日=31-19)。
その事実だけで、昨季6年ぶりにプレーオフに勝ち残ったNECが今季さらなる飛躍に向けて、実に順調なプレシーズンを過ごしてきたことがわかってもらえるはずだ。
今季、キャプテンに復帰したLO/FL浅野良太主将は「プレシーズンとはいえ、2回続けてサントリーに勝てたのは、自分たちの100%が出せたから。若い選手たちは自信を持っていい」と、若手の多いチームにとっての王者討ちが確固たる自信につながっていることを実感している。
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ヘアースタイルを変えてイメージチェンジ(?)のWTBナドロ。今季はゴールキックを蹴るシーンも増える?
photo by Kenji Demura (RJP)
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昨季までコーチングコーディネーターという立場だったクレッグ・クーパーヘッドコーチが今季から前面に出て指揮を執ることになったが、戦術面で大きな変化はなさそうだ。
「ベーシックな戦い方は他のチームと変わらない。まずはフィジカルバトルを制して、ゲインラインを切っていくことが重要。そして、空いているスペースにボールを運んでいく」(クーパーHC)
新戦力としては、プレシーズンマッチではAチームでの起用も多かったLO小野寺優太(流経大=U20日本代表)が確かな存在感を示し、NO8ヴァカタウ・イシレリ(流経大)の突破力も戦力アップにつながりそうだ。
昨季のトライ王WTBネマニ・ナドロ、あるいは日本代表としても活躍したSO/CTB田村優など、アタック面で非凡な能力を発揮する選手も増えたNECだが、伝統的に強みは前に出るDF力。
夏のサントリー戦でもブレイクダウンでプレッシャーをかけながら、どんどん前に出て行くスタイルでプレッシャーをかけていくスタイルは機能していた。