12節 マッチサマリー(リコー 14-39 東芝)

リコーブラックラムズ 14-39 東芝ブレイブルーパス
【week12/2012年1月29日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

東芝、プレーオフ進出を決める

晴天ながら寒風吹きすさぶ秩父宮に5千人を超える観客を迎えて、プレーオフ進出を決めたい東芝(勝ち点45)と、プレーオフ進出に望みをかけるリコー(勝ち点33)との一戦が繰り広げられた。

東芝によるキックオフ開始から間もなく、リコーはCTBノヌーを中心に飛ばしパスを交えながらワイドに攻め込み、東芝のオフサイドを誘う。ペナルティキックで相手ゴール前10mからの味方ラインアウトを確保するも、東芝のボールへの執拗な絡みにより奪取されてしまう。その後も、リコーは相手陣内での攻めのチャンスを幾度となく得るが、東芝の強力で隙のないディフェンスに遮られ、攻めあぐねる。

一方の東芝は、リーチやベイツの両FLを起点とした縦への突破と素早い集散の繰り返しとで、相手に圧力をかけていく。相手陣内に攻め込んだ東芝は、12分、CTB仙波が相手ラインを抜け、フォローしていたFB松田が先制トライ(ゴール成功0-7)。さらに20分、東芝FLベイツにLO大野がしっかりフォローして相手ゴール前5mに迫り、ラックからSOヒルのパスを受けたWTB伊藤がゴール右隅にトライ(ゴール成功0-14)。

リコーは風上からの攻めを生かし、ロングキックやハイパントで相手陣内へと進むが、ミスで思うように攻めきれない。東芝は、27分、ゴール前10mで得たラインアウトからモールを押し込み、HO湯原が右隅寄りにトライ(0-19)。リコーのLOカウヘンガも果敢に突破を試みるが、東芝の固いディフェンスは綻びない。東芝が終始主導権を握り、リコーをノートライに抑えた前半であった。

後半、余裕のでた東芝は、モール攻撃からキックパスを試みるが僅かに合わない。しかし、6分、相手ゴール前での一塊となったラインアウトモールを怒涛のごとく押し込み、FLベイツがトライ(ゴール成功0-26)。

一方的な展開になるかと思われた10分、リコーは相手ペナルティから得たラインアウトから素早く展開、FBエリソンが相手ラインを勢いよく駆け抜け、パスを受けたWTBリーがトライ(ゴール成功7-26)。前半とは打って変わって攻めのテンポが良くなったリコーは、攻勢時間が増える中、21分、味方ラインアウトからLOカウヘンガ、FBエリソン、WTB横山と回し、最後はWTBキニキニラウが右サイドを30m以上快走。回り込んでほぼ中央にトライ(ゴール成功14-26)。しかし、リコーはミスやペナルティでこの有利な流れを持続できない。

東芝は25分、相手ゴール前正面の短いPGをSOヒルが難なく決める(14-29)。さらに東芝は、小刻みにラックサイドを突きながらフィジカルな攻めを展開。33分、再びラインアウトモールから途中出場直後のHO高木が左隅にトライ(14-34)、リコーを突き放す。最後まで攻撃の手を緩めない東芝は、フォーン後の42分、味方スクラムからラックを連取、最後はHO高木、SOヒル、FB宇薄と繋いでトライ(14-39)。東芝は、前節勝利したサントリー戦でのフィジカルな激しい攻めを今日の試合でも遺憾なく発揮、勝ち点累計50でプレーオフ進出を決めた。
なお、マン・オブ・ザ・マッチには、東芝のHO湯原が選ばれた。(小林吉文)

会見ダイジェスト
リコーブラックラムズ
山品監督(右)、滝澤キャプテン
山品監督(右)、滝澤キャプテン

◎リコーブラックラムズ
○山品博嗣監督

「多くの皆様とリコー関係者に応援していただき、ありがとうございました。リーグ最後の秩父宮ということで、何としても勝ちたかったのですが、東芝さんの方が上手でした」

──ゲームプランは?

「東芝さん、どうこうでなく、自分たちのアタックがいろいろとありますが、オプションを限定して選択しました。基本的にはいつも通りです」

──プレーオフ出場はなくなったが?

「数字に出た部分ですが、東芝さんのモールを止められなかったのは、こちらのメンタルの面もあるし、ラックも圧倒的に東芝さんの方がクイックに出せていました。ラックではこちらをスローボールにさせられるプレーにやられました」

──先輩の松田選手が活躍したが?

「今もトップでやっていらっしゃるのは、本当に素晴らしいです。そういう方がいることはラグビー界全体に良い影響を与えています。年齢は関係ないことを示していらっしゃいますね」

○滝澤佳之キャプテン

「チームとしても、個人としても、今日の試合を楽しみにしていましたが、自分自身にがっかりしています。細かいミスを重ねて、修正できませんでした。後半の入りの気持ちを前半から持ちたかったと思います」

──前半は、どうして後手に回ったのか?

「選手のミスです。自分もタックルミスをしました。小さいミスを自分たちで修正できませんでした。個人的にも切り替えられず、敵を自分たち自身にしてしまったと思います」

──ハンドリングミスはグラウンドのせいでは?

「多少関係すると思いますが、東芝さんも同じ条件ですので、切り替えないといけません」

──前半、スクラム、モールで押されたわけは?

「スクラムに関しては、少しスリップしたとき、やはり向こうのほうがまとまっていたと思います。そしてこちらは、一人ひとりが攻撃する矛先を自分に向けてしまったと思います。モールディフェンスは1年間やってきたことですので、すごく残念な結果です」

──東芝のどこにやられたのか?

「強かったですね。前へ出る意識が、一人ひとり強かったです」

東芝ブレイブルーパス
和田監督(右)、豊田キャプテン
和田監督(右)、豊田キャプテン

◎東芝ブレイブルーパス
○和田賢一監督

「本日はありがとうございます。寒い中、本当に多くのファンの皆様に応援いただき、心から感謝申し上げます。今週のテーマは『一貫性』です。前からやってきたことを、ブレずにやりきることがテーマでした。試合前半の入りから主導権を握ることができました。アタック、ディフェンスも規律を守ってやり切れました。リコーさんのリズムのとき、トライを獲られましたが、修正して、次週のパナソニック戦に備えます」

──松田選手が活躍したが?

「今日の15番は、練習から、彼が若手と競争して勝ち取ったものです。仙波選手がラインブレイクしたところに自分から上がっていって、僕らが言う『一貫性』を示してくれました。怪我はまったく心配ないです。前半から飛ばして、ちょっと足がしびれただけです」

──リコーにリズムを作られた場面は?

「一つ一つのタックルの質に課題があります。向こうのファーストトライは、こちらがちょっとした規律を守れなかったからです。相手のアタックも良かったと思います。ラインアウトからスペースを取りに行ったのですが、エモシ選手、キニキニラウ選手の強さにやられました。1次のディフェンスですので、ミスマッチではありません」

──来週、パナソニック戦だが、プレーオフでもすぐに当たりそうだが?

「正直、そこまで考えていません。一つ一つの積み重ねが大事です。13節のパナソニック戦にベストを尽くすだけです。正直に言うと、プレーオフは選手がもぎ取ったものですから嬉しく思います」

──チームとしての成長の手ごたえは?

「選手自身がラグビーの原点である、何をぶつけていくかを考え、ブレイクダウンを動かすことも意識してきたからだと思います。4月からFWの成長なくして勝利はないと言い続けてきましたが、FWが自信を持ったし、選手が現状レベルと、やらなければいけないことを意識してきたからです。結果が伴わない時もありましたが、もう一度、春からやってきたモールを再認識することもできてきました」

──これからの修正点は?

「一つ一つのプレーの精度を高めることです。ちょっとしたパスのズレ、遅さが勝負を分けます。トライを獲るべき時に獲らないと相手のリズムになります。それを全員が意識できるようになりたいですね」

○豊田真人キャプテン

「始めに、来場された多くのラグビーファンの皆様にお礼申し上げます。『一貫性』は、春から貫き通してきましたが、選手一人ひとりが、一歩でも前へ出て、相手よりも少しでも動くことです。今日はリコーさんのペースのときもありましたが、前へ出続けることができました。結果、6トライ獲れて、2トライ獲られましたが、パナソニックさんは昨年の最後に負けた相手ですので、しっかり修正して臨みたいと思います」

──最後に攻めたのは?

「最後まで続けようと思っていましたので。その結果、最後はトライを獲れましたし、10分間、攻め続けることができました」

──ここにきて、締まってきたが?

「中盤戦で2敗したけれども、ここ一月の4連戦は良く戦えていると思います。一つの理由として、出ている選手だけでなく、Bチームの選手やスタッフが、思い切りラグビーを楽しんで、一つ一つ自分たちができることを100%出してくれているからだと思います。そのために勢いが違ってきたと思います」

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