トップリーグ 2017-2018 第10節 レポート(パナソニック 54-5 NEC)
ジャパンラグビー トップリーグ 2017-2018 第1節
2017年12月3日(日)13:00キックオフ/群馬・太田市運動公園陸上競技場
パナソニック ワイルドナイツ 54-5 NECグリーンロケッツ
パナソニックワイルドナイツが地元・太田市でNECグリーンロケッツを54-5で破り開幕10連勝を飾った。同時に、三洋時代から続く同競技場での連勝記録を30に伸ばした。
日本代表のフランス遠征などで1カ月余りの中断期間後、絶好の天候に恵まれ4,241人のファンが競技場に詰め掛けた。
前半の立ち上がりからパナソニックが圧力をかける。前半4分、10分、15分と連続でSOベリック・バーンズがPGを決め加点していく。17分に、NECがシンビンで一人少なくなった直後の20分に、ゴール前右サイドのラックから大きく左に展開しNo8ホラニ龍コリニアシのトライで主導権を握った。勢いに乗るパナソニックは26分に、ラインアウトからモールを押し込みHO坂手淳史。37分に、左サイドに回り込んだWTB北川智規がトップリーグ通算101個目のトライを決め30-0で折り返す。
反撃に出たいNECは後半4分、ラインアウトからモールを押し込みFL大和田立がトライし先制するも、パナソニックは10分に、日本代表から戻ったばかりのFB藤田慶和のトライで追いつくと21分に、今季初先発のPR田村エムセン。27分に、この日2本目のトライをNo8ラニ龍コリニアシ。37分に、こちらも日本代表から戻ったヴァルアサエリ愛がトライを決め突き放す。終わってみればベテランと新戦力、日本代表組と国内組とがコミュニケーション良い連携で圧倒する内容に層の厚さを見せつけた試合となった。
ハーフタイムには第97回全国高校ラグビー大会に出場する本県代表、明和県央高校の壮行会が行われた。中野陽介主将と斉藤拓也副将が決意表明し、会場から温かいエールが拍手とともに送られた。また、メガネの板垣によるクリスマスプレゼント抽選会や、大泉町商工会青年部が野武士焼きそばフランスパン添えを販売するなど会場内外でも大いに盛り上がった。
(群馬県ラグビーフットボール協会 富澤伸治)
NECグリーンロケッツ
ピーター・ラッセル ヘッドコーチ
「タフな試合だった。我々としてはいい意図を持って臨んだ試合だったが、パナソニックさんからナンバーワンであるところを見せられた。特に残念なのは規律の部分。
来週は土曜日の試合で準備期間は短くなるが、しっかり修正していきたい。昨年就任して以来、一番厳しい試合だった。チームをまとめ直して次の試合に臨みたい。
後半は冷静なプレーもあって、FWのいいランナーのモールトライもあったが、もっと規律の部分を上げていかないといけない」
瀧澤直キャプテン
「今日はパナソニックさんのおひざ元で、バスで到着した時にはすごい人がいた。東京でない試合でこのくらい人が集まることはなかなかない。NECの応援に来てくれた方もいたが、パナソニックさんの応援が多くて、すごく地域に根付いているなとの感想を持った。
アウェーの試合にエキサイトしていたが、結果としては自分たちの期待したものではなかった。こてんぱんにやられたと言うか、一番自分たちが想定したことからかけ離れた内容でがっかりしている。いい言葉を探そうにも、なかなか難しい内容だった。だからといって今日で人生が終わるわけでも、チームが終わるわけでもない。シーズンはまだまだ続く。一番強いチームからすごい授業をしてもらったという気持ちでいくべきだと思う。レギュラーシーズンと順位決定戦を合わせればあと5試合ある。次はショートウィークだし、肩を落としている場合ではない。これを次に生かすしかない。
──次も強豪のサントリーが相手。ボールを継続できなかった点を含め、具体的にどこを修正するのか。
ラッセルヘッドコーチ
「規律の部分を上げていかなくてはいけない。それはマインドセットの部分でもあり、強い相手にディフェンスをしているだけではなく、パナソニックに攻め勝つところもやってきたが、サントリー戦ではしっかり忘れずに意識していきたい。今日の試合は5分くらいから5回連続のペナルティーがあり、イエローカードも出た。そういう部分をしっかり修正していきたい。
パナソニックは本当に素晴らしかった。リザーブのフロントローは日本代表選手ということもあり、スローで試合を立ち上げるのではなく、もっと早い段階からいいプレーをしていかないと。若手も成長していかなければならい」
瀧澤キャプテン
「自分たちの悪いところが出たし、出させられた部分でもある。修正することは特別なことはないと思っている。自分たちがやりたいことができなかったとか、レベルが低かっただけのこと。何か特別な、格好いいプレーができれば球が出るわけではないし、楽な道はないと思っている。ひとつひとつのことを正確にやっていく必要がある」
──前半20分までは反則三つで0-9の状況だったが、うまくいかなった部分は。
瀧澤キャプテン
「良かったとは言えないが、1トライ1ゴールで7-9を作れるシチュエーションは、ロースコアで勝つことをイメージしていた僕らにとっては悪くないと思っていた。そこでの気持ち、メンタル面は最高でないにしろ、最低ではなかったと思う」
──反則が多かったのはなぜ。
瀧澤キャプテン
「具体的な何かというわけではないが、小さなプレッシャーはあったと思う。たとえばイエローカードを取られた部分はラインブレークをされ、そうせざる得なかったというのもあったと思う。簡単に球を出されたらゲインされてしまうから、球出しを遅らせた結果の反則だとか、逆転を狙うギャンブルで空中戦を競りにいった結果、ペナルティーだったというのもあった。もちろん、こちらだけの問題のペナルティーもあった。自分たちだけで防げるものは減らしていかないといけない」
パナソニック ワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「後半戦こういう形でスタートを切れて嬉しく思う。前半戦最後の熊谷でのサントリー戦以来、試合を全くやっていなかった。日本代表の選手たちも戻ってきたところで、メンバーに新しい選手たちが入り、今シーズン初(ゲーム)キャプテンの北川智規選手とさまざまなチャレンジがあった。NECさんはこの1か月間をパナソニック戦に向けて準備をされてきたと思うので、やりかたいことをさせなかったところには満足している」
北川智規ゲームキャプテン
「NECとは春対戦していて、やってくることを分かっていた選手も多いと思うので、やりやすかったというのが印象。特別なことをやるわけではなく、NECさんが持ち味を出そうとやってきたというのが感想。やりたいことをやらせず、自分たちは気持ちよくやろうというのが僕らのラグビー。それができた試合だと思う」
──難しい状況でも好スタートできた一番の要因は。
ディーンズ監督
「簡単に言えば、チーム全員がこの1か月間ハードワークを意識した練習を続けてきた結果と思う。組んでいた練習試合が中止にならなかったとしたら、今日先発したメンバーは素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたと思う。それが裏付けられた。我々はチーム、スコッド全体でしっかり準備をしてきた。それが現れた試合になった。若いフロントローの選手たちはしっかりしたプレーをしてくれた。小山(大輝)がハーフとしていいプレーをしてくれた。こういったことは偶然に起こり得ることではない。彼が試合に向けてしっかりと準備してきたからだと思う。そういった若い選手たちのパフォーマンは(北川)智規やコリー(ホラニ龍コリニアシ)といったベテランのコミュニケーションが大きな助けになったし、そのことで彼らもトライを決めることができていた。我々は毎週毎週、全ての選手が伸びていける環境をつくっているつもり。そうすることが試合で悔しい思いをしない、負けないことにつながっている」
──プレーに規律があった。試合前の約束事は。
北川ゲームキャプテン
「基本的なことでノーペナルティーで敵陣に行く。シンプルにプレーすることを心掛けた。ペナルティーをすれば自分の首を絞めるだけ。無理をしなくても次で止められる自信が僕らにはあるので、(ペナルティー)をしないのだと思う。ラック周辺のコミュニケーションでコールできていたし、ひとりひとりの意識も高くやれた。常に準備はしている」
──若い選手の成長、チームの変化は。
「いろんなスタイルが入ってきて、いろいろ発見がある。練習では出ないプレーが試合で出たり、(ピッチの)中にいなければ分からないことがあって試合を楽しめた。笹倉(康誉)とも話していたが、練習の方がきつい」
──田村エムセン選手や小山大輝選手の起用は成長を感じてのことか。
ディーンズ監督
「まさにその通り。コーチ陣は練習でのパフォーマンスをしっかり見ているし、いいプレー、いい練習ができるようになって初めてゲームで使える。トップリーグの試合に送り出す時にはいいパフォーマンスをしてもらうために送り出すのであって、プレーするためだけに送り出すことはない。エムセンは今回初めて自分のプレーをできるレベルになったとの感覚があった。選手たちは競争の激しい練習をやっている。小山は負けず嫌いな選手で、負けん気は常に練習で出し切っている。それは内田(啓介)やフミ(田中史朗)にとっても刺激になっている。内田とフミは若いハーフを教えることもしっかりやっているし、その中から学ぶこともある。智規もやってくれているし、教えからまた競争が生まれ、それが自分のためになることを彼らは分かっている。自分がジャージを脱ぐ時のために、チームにレガシーを残していくことをベテランの選手たちはやってくれている」
──北川ゲームキャプテンに試合前の意気込みと通算101個目となるトライの感想を。
北川ゲームキャプテン
「僕が入る前から地元での連勝が続いていて、堀江(翔太、前主将)と『止めたキャプテンにはなりたくない』と話していた。絶対勝つぞ、と。僕は負けなしで引退したいので。ゲームキャプテンは気負うことがなかった。『自分たちの方が楽しいラグビーをしよう』と話していた。トライまでは長かったなぁ、と。前がちょうど1年前のこの競技場だったので」
──トップ4は目前。今の気持ちは。
ディーンズ監督
「常に今週、それが終われば来週と一つ一つの試合を積み重ねていくだけ。ただこの(地元)30連勝が懸かったこの試合だけは特別なゲームだった。
来週の熊谷でのホーム戦が終わればトップ4を争っているリコーさん、ヤマハさんとのハードな試合になる。それはプレーオフに向けた最高の準備になる」
(写真提供:上毛新聞社)