シーズン開幕特別インタビュー「薫田強化委員長に聞く今シーズンの見どころ①」
シーズン開幕特別インタビュー<前編>
ジャパン強化サイドはトップリーグ2017-2018をこう見る!
薫田強化委員長に聞く今シーズンの見どころ①
8月18日、ジャパンラグビー トップリーグ2017-2018が開幕する。
2年後にラグビーワールドカップ2019が迫っているという事実を見据えた時、今季のトップリーグで各チーム、各プレーヤーがどんなパフォーマンスを見せてくれるかは、そのまま地元開催ラグビーワールドカップでの日本代表の命運を左右すると言っても過言ではないほど重要なファクターとなる。
ラグビーワールドカップでの上位進出が義務付けられる日本代表の強化にダイレクトにつながるシーズンの開幕を前に、薫田真広・日本代表チーム15人制強化委員長に日本代表強化という観点からはトップリーグ2017-2018をどう見ていくべきなのかを語ってもらった。
前編・後編の2回にわたって、シーズン開幕特別インタビューとしてお届けする。
(構成 出村謙知)
「トップリーグ各チームの協力なくして2019年RWCでのジャパンの成功なし」
──2019年ラグビーワールドカップまで、あと2年。今シーズンのトップリーグはこれまで以上に日本代表が地元開催ワールドカップでどんなパフォーマンスを見せてくれるかに直結したものになります。
日本代表強化に携わる薫田さんとしては、まもなく開幕する「ジャパンラグビー トップリーグ2017-2018」に関して、どのようなことを期待して、どう連動していきたいと考えていますか?
薫田「日本代表とトップリーグとの関係で言うなら、今シーズンに関しては特に2つの要素に注目して見ていく必要があると思っています。ひとつはもちろん選手のパフォーマンスそのものであり、もうひとつはパフォーマンスを上げるために、日本代表とトップリーグ各チームがどう連携をはかっていくか。
我々日本代表のマネージメントの立場で話をさせていただくなら、『トップリーグの協力なくして2019年の成功なし』というのは大前提だと考えています。
トップリーグとサンウルブズ(ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ)が代表強化においては重要なファクターになる。選手のコンディションを保っていくウェルフェアという観点から言ってももちろんそうです。
特に日本の場合、サンウルブズのスーパーラグビーへの参加により、1年中トップレベルの試合が行われるようになり、試合をするための移動距離も大きくなっています。
当然ですが、どこで選手を休ませるのか。昨シーズンもそういう観点から協力をしていただいたチームもありましたが、今シーズンもスーパーラグビーを終えて、非常に疲れている選手もいますので、メンタル面も含めてどのようにリコンディショニングしていくか。トップリーグ各チームとしっかり連携をとりながら、ご理解いただくことが重要になると考えています。
もちろん、学生の中からも2019年につながる選手は出てくる可能性も十分あるとは思いますが、大半はトップリーグの選手からということになる。そういう意味でも、トップリーグの繁栄があってこその日本代表であることは間違いない。
いまの段階では、トップリーグでプレーする代表資格のある選手全員にチャンスがある。『いまベストな選手』はもちろん、『2019年にベストになるであろう選手』としてこんな選手が出てくる可能性があるという情報を徹底的に試合会場や映像で精査して、セレクションしていかないといけないのかなという見方は持っています」
──選手のウェルフェアという部分では、現時点でのトップリーグ各チームサイドの反応はどのような感じでしょうか。
薫田「ジェイミー(ジョセフ日本代表ヘッドコーチ)とトップリーグ各チームを回ってきましたが、全チームから協力をしたいという意思表示をしていただきました。日本代表の主力になる可能性のある選手を休ませなければいけないという認識は多くのチームが持ってくれている感触は得ています。
もちろん、各チームの事情がそれぞれ異なるなか、各論としてどう協力してもらえるかは、今後より一層のコミュニケーションをはかりながら、詰めていかないといけないと考えています」
日本代表につながる今季のキーワードは
ディシプリン、ハードワーク、一貫性…
──サンウルブズができて2シーズンが経ちました。スーパーラグビーを経験している選手たちがさらに成長できるレベルを維持していくことが重要になりますね。
薫田「パフォーマンスを上げるという意味では、トップリーグにおけるプレースタンダードをいかに世界基準にしていくかというのがポイントのひとつだと考えています。今シーズンからボールも変わりますし、ワールドカップでベスト8に入るために、選手がそこに向けたマインドを維持しながらトップリーグでもプレーすることが重要になる。そういう質の高いゲームを期待していますし、プレーヤーには一貫性のあるパフォーマンスを見せてほしい。
11月に控えるテストマッチ(豪州、フランスなどとの対戦が予定されている)を考えた場合、やはりこの春サンウルブズで戦ったプレーヤーが日本代表の軸になっていく。そういう軸となる選手が、トップリーグの試合でベストプレーヤーを選んでいった時に、必ずベスト5までに入っている。そういうパフォーマンスを続けていかないといけない。
もちろん、新しい選手が出てきてほしいという願望もありますが、その一方で、サンウルブズで国際経験をしっかり積んできた選手たちがそれに相応しいパフォーマンスを示してほしい。あくまでも、世界基準から見ての一貫性です」
──具体的にトップリーグの試合を見る時に、「こういう部分に注目する」というポイントはあるのでしょうか。
薫田「日本代表につながるという意味では、ペナルティの部分。前回のワールドカップでは、日本が一番ペナルティが少なかった。絶対条件として、日本はペナルティを少なくしないと勝てないというのがあるのにもかかわらず、春シーズンは不用意なペナルティが多かった。世界基準の笛を意識して、トップリーグでも反則の少ない試合を期待したい。
そして、ジェイミーが掲げる『ハードワーク』という部分。オンフィールドでもオフフィールドでもそうです。そういうハードワークができる選手を見つけていく。そのためにも、各チームからの選手の情報を、見える部分だけではなく、見えない部分までしっかり吸い上げていくというのが重要になっていく。
もちろん、今後ジェイミーがどういうプランを練るのかによって、選手を見る目も当然変わっていくでしょう。
例えば、進化するアンストラクチャーなラグビーにはどういう選手が必要になるのか。
トップリーグで勝つことも当然重要ですが、マインドセットとして世界につながっているということを意識してプレーしてもらいたいですね」
以下、後編に続く。