新たに日本代表になったトップリーガーを紹介②=FW第3列、BK編
ジョージアにアウェー戦勝利! ウェールズを追い詰めた!
欧州で輝いた新生・日本代表の新顔をトップリーグで再確認だ
FW第1列、第2列編 | FW第3列、BK編
text by Kenji Demura
前編で取り上げたFW第1列、第2列に続いて、この秋、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ率いる日本代表のテストマッチで活躍したニューフェイスを取り上げる第2弾。
後編ではFW第3列とBK勢について紹介する。
欧州でしのぎを削った日本人バックロー
いずれも特徴を出した三村、布巻、松橋
FW第3列では、近い将来、日本代表を支えていくことになりそうな若きタレントが大いに弾けた。
前編でも取り上げたように、実にFWのノンキャッパー6人がいきなり日本代表に選ばれたヤマハ発動機。
バックローと呼ばれるFW第3列ではFL三村勇飛丸主将が日本代表初キャップとなった(ヘル ウヴェはヤマハ発動機ではFLとしてもプレーするが、日本代表ではLOでの起用だった)。
ジョセフHC率いる日本代表として初のテストマッチとなったアルゼンチン戦でオープンサイドFLとして先発。欧州遠征ではウェールズ戦で途中出場を果たした。
「最初DFが整備されてない中で試合(アルゼンチン戦)に出て、思うようなプレーできていなかった。その代わりに出た峻(=FL布巻峻介=パナソニック)が調子良かったし、いろんな意味で勉強になった。(その後、途中出場したウェールズ戦では)やることはできていたつもり」
充実感半分、悔しさ半分という感じとなったが、今後も桜のジャージを着るためには、主将という立場であるヤマハ発動機で今まで以上のパフォーマンスを見せられるかにかかっていることは間違いない。
主将であるヤマハ発動機で1ヶ月不在になったことに関しては、「ジャパンに行ってきたからヤマハでやってきたことを忘れたとか言ったら、チームのみんなに『なんだこいつ』と思われる。切り替えは得意な方だし、大丈夫だと思う」と、悪影響はないとの考えだ。
その三村から「調子が良かった」と評価された布巻は、欧州遠征の3試合全てで桜のジャージの「7番」を着けてジョージア、ウェールズ、フィジーと対峙した。
アルゼンチン戦の三村のパフォーマンスに関して「ハッピー」と合格点評価を与えていたジョセフHCをして、「ブレイクダウンが強く、ボールコンテストで目立つ選手。タフなメンタリティを持っているし、低いプレーができてフィジカル。試合を読む力もある」と言わしめるほどの絶賛を受け、この秋の日本代表オープンサイドFLの座を自分のものにしたかっこうとなった。
元々、高校時代から数々の大舞台を経験してきた余裕からか、初テストマッチとなったジョージア戦を前にしても「いつもの試合に向かう気持ちと一緒。試合に向けてワクワクはしているが、パナソニックの時と変わらない」と、超がつくほどの平常心で臨んでいたのが印象的でもあった。
逆に言えば、トップリーグの試合も常にテストマッチと同じテンションで臨んでいるわけで、日本代表として欧州遠征を経験したことで「試合をするたびに課題が出てきてくれている。成長できるなという感覚はもっている」と自己評価する、質が高まったハードワーカーぶりをパナソニックでもそのまま披露してくれそうだ。
さらに、FW第3列で先輩の2人に負けず劣らずのインパクトを残したのが、松橋周平。
新人ながら、トップリーグ開幕と同時に所属するリコーでNO8のレギュラーポジションを獲得している松橋だが、ジョセフHCはFLで起用。ジョージア戦を除く3試合で途中出場を果たした。
ことに、最後の2試合での松橋の働きは特筆すべきものがあった。
ウェールズ戦では後半19分に、フィジー戦では前半「精彩を欠いた」(ジョセフHC)日本代表にエネルギーを与えるために後半開始と同時に交代出場。
「ボールキャリーだったり、DFとかアタックのパワー。その部分でハードワークできる。そういう自分の強みをしっかり出したい」という言葉どおりの体を張ったプレーでチームの勢いを取り戻し、後半、日本が挽回できたひとつの要因となった。
ジョセフHCになって、ポジションごとに果たすべき役割が明確にされ、より機動力が求められる戦術が採られる中、FLのポジションで決してサイズに恵まれているとは言えない日本人の新鋭がしのぎを削ったことは興味深い。
次は是非とも、トップリーグの対戦の中で、今が旬な日本人バックローのプレーに注目してもらいたい。
12月のヤマハ発動機、パナソニック、リコーのスケジュールは以下のとおり。
18日には布巻対松橋の直接対決でも盛り上がりそうなパナソニック – リコー戦も予定されている。
<ヤマハ発動機ジュビロ>
3日=豊田自動織機シャトルズ(静岡・エコパスタジアム)、10日=NECグリーンロケッツ(静岡・ヤマハスタジアム(磐田))、18日=神戸製鋼コベルコスティーラーズ(兵庫・ノエビアスタジアム神戸)、24日=サントリーサンゴリアス(静岡・ヤマハスタジアム(磐田))
<パナソニック ワイルドナイツ>
4日=クボタスピアーズ(群馬・太田市運動公園陸上競技場)、10日=Honda HEAT(大阪・東大阪市花園ラグビー場)、18日=リコーブラックラムズ(東京・秩父宮ラグビー場)24日=宗像サニックスブルース(福岡・レベルファイブスタジアム)
<リコーブラックラムズ>
3日=Honda HEAT(静岡・エコパスタジアム)、10日=クボタ(東京・秩父宮ラグビー場)、18日=パナソニック(東京・秩父宮ラグビー場)、24日=豊田自動織機(愛知・パロマ瑞穂ラグビー場)
アンストラクチャーなBK攻撃を支えた
進境著しいロトアヘア&ラファエレ
BKに目を移すと、ここ数年はあまり日本代表とは縁のなかったチームからの新鋭の活躍が目を引いた。
FL/NO8松橋の同僚であるユティリティBKアマナキ・ロトアヘアはアルゼンチン戦でアウトサイドCTBとして先発した後、欧州の3試合では主にWTBとして途中出場。ウェールズ戦では、後半33分に同点につながるトライを奪うなど、強いインパクトを残した。
「自分のパワーを使って前に出る。そしてトライを取りきる。ウェールズ戦ではいい仕事ができた」
ちなみに、シーズン開幕前にリコーのLO馬淵武史主将に「今年のイチ押し選手」を聞いた時に名前が挙がったのが、松橋とロトアヘア。
そのふたりが揃って日本代表でも活躍。前半戦も好ゲームが多かったリコーだけに、日本代表でさらに成長してふたりが戻ってくることになりそうだし、後半戦はさらに目が離せなくなりそうだ。
一方、コカ・コーラ所属のCTBティモシー・ラファエレはアルゼンチン戦では途中出場だったが、欧州の3戦ではロトアヘアに代わって13番を着けて、日本のミッドフィールドにメリハリをつけるような働きぶりで存在感を示した。
「自分の仕事はスペースを見つけて、ボールを運び、チャンスを作って、そしてフィニッシュする。いつもボールが動いているし、最初は慣れるのに大変だったけど、ジャパンのラグビースタイルは自分の持ち味を出せるので、向いていると思う」
そう語るラファエレだが、いきなり初招集にもかかわらず、日本代表のラグビーに適応できたのは、所属するコカ・コーラのラグビースタイルも常にボールを動かしてトライを取りに行くものだったため、元々慣れていた面は大いにあるだろう。
SH小川高廣とSO小倉順平のハーフ団に関しては、同じポジションのSH田中史朗−SO田村優が圧倒的な存在感を示していたため、出場機会には恵まれなかった(小川はアルゼンチン戦の後半32分から途中出場)。
もちろん、ふたりとも日本代表としてこのままで終わるとは思っていないだろうし、リベンジのチャンスを獲得するためにも、まず重要なのは今後のトップリーグでのプレーぶり。
日本代表での悔しい気持ちやフラストレーションをプラスのエネルギーに変えてチームに貢献できるか。その意味では、東芝とNTTコムの戦いぶりをしっかりチェックしておきたいところだ。
コカ・コーラ、東芝、NTTコムの12月のスケジュールは以下のとおり。
<コカ・コーラレッドスパークス>
4日=東芝(鹿児島県立鴨池陸上競技場)、10日=サントリー(東京・秩父宮ラグビー場)、17日=クボタ(千葉・フクダ電子アリーナ)、24日=NEC(福岡・レベルファイブスタジアム)
<東芝ブレイブルーパス>
4日=コカ・コーラレッドスパークス(鹿児島県立鴨池陸上競技場)、11日=神戸製鋼(兵庫・ノエビアスタジアム神戸)、18日=近鉄ライナーズ(大阪・ヤンマースタジアム長居)、24日=トヨタ自動車ヴェルブリッツ(東京・秩父宮ラグビー場)
<NTTコム>
3日=サントリー(大阪・東大阪市花園ラグビー場)、11日=豊田自動織機(愛媛・ニンジニアスタジアム)、18日=宗像サニックス(宮崎・KIRISHIMAハイビスカス陸上競技場)、24日=Honda HEAT(愛知・パロマ瑞穂ラグビー場)